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 妖精たちの報告会

 星降の国王へ、己が導いた入学予定者の旅を報告することが、案内妖精の最後の義務だ。嘘や誤魔化しは許されず、妖精が思ったこと、感じたことを交えての報告は時として辛い感情を呼び起こすことも多く、そう短い時間で終わるものでもない。ソキを見送った妖精は日暮れの庭園を突っ切って王の私室を目指して飛びながら、さて今年は入学式の開始予定時刻に間に合うだろうか、と思案した。今年の入学予定者は四人。四人分の報告をはじめるのに、夕刻という時間はやや遅い。妖精が現れるより早く他の報告が始められていれば十分間に合うが、その可能性は著しく低いものだった。
 星降の国王は、案内妖精として遣わされた愛しい神秘が、他の者がどう考え、どう動き、どう導いてきたのかを知ることも大切な、最後の義務だと思っているからだ。そして全てを次へ生かし、来年の安全な旅へ繋げて行くのだと言う。案内妖精の選定において、個々の相性は最大限考慮される事柄のひとつだが、経験も重要だとされているのは、その報告会があるからだ。このコはリーちゃん以外には、たぶんちょっと難しくて連れて来られないと思うんだ、と言って入学許可証を手渡された日のことを、妖精はあざやかに思い返した。ええ、ええ、本当に難しい相手でしたとも、と溜息をつきながら微笑み、こみあげてきた感情を深呼吸で抑えて、妖精はひらりと、すこしばかり空いた窓の隙間から室内へ飛び込んだ。
『お待たせ。……ちゃんと送って来てやったわよ』
 ソキの名前を口にしようとして、妖精は途中でそれを取りやめた。名前を呼べば堪えた涙が零れてしまいそうで、そんなことは到底、我慢できなかった。代わりに、不機嫌めいた仕草で腕組みをしながら言い放てば、椅子に座っていた国王が満面の笑みで立ち上がる。その周囲を舞う妖精は、暗闇の中、三つの光点に見えた。灯篭のようだ。てのひらを暖め、暗闇を照らしながら、仲間たちは妖精と同じように、入学予定者を導いてきたに違いない。ほっと安堵する気持ちで国王の差し出した手の上へ舞いおりれば、おかえり、と親しげな声と共に頬が擦りつけられる。
「ちゃんとお別れしてきた? リーちゃん」
『お見送りはしてきましたが、お別れしたつもりはありません』
「……あれ?」
 そうなの、ときょとんと見つめてくる国王に、妖精はすました顔で頷き、その指先から空へと飛び立った。ぱたりと羽根を揺らして、告げる。
『お願い、というか。アタシ、来年、さ来年、その次の年くらいで案内妖精、辞めます』
「なんで?」
 問う顔は幸せそうに笑っていて、妖精の決意を薄々は察しているようだった。分かっているのなら聞くものではないですよ、と咎めても、青年は聞きたいと笑みを深めるばかりで、妖精の遠回しな言いたくない、を許してくれない。興味、訝しみ、期待、それぞれの感情を視線に乗せてくる仲間を睨みながら、妖精は苛々、羽根をぱたつかせて言った。
『あのコの契約妖精になって、あのコが行く所へ、一緒に。どこへだって行くと決めたからですが! なにか文句でもおありですかっ?』
『きゃあああ! 先輩、先輩っ! わたしと一緒です! おそろいですーっ!』
『……お前はーっ! 初回で! なにを! 考えてんだーっ!』
 期待のこもったきらきらの目で見つめていた案内妖精、ニーアが、歓声をあげて飛びついてくる。それをひらりとかわし、背中を蹴っ飛ばして怒鳴りつけた妖精は、そのままの勢いで仲間たちに向き合った。
『アンタたち! アンタたちはまさかそんなこと言わないわよねっ?』
 というか、なんて呼ばれていたのか今すぐに申告しろ、と言った妖精に、男性型の妖精たちは揃って従順に口を開いた。案内妖精はその時々によって呼び名をくるくる入れ替える。真名の他に個人で所有している愛称をそのまま告げる場合もあれば、妖精のように、迎えに行った入学予定者がその感性で名付けることもあった。どちらでも構わないのだが、呼び名として定着したその響きは、純粋な魔力そのものに近い妖精という存在に、ひどく影響する。名付けられたのであればなおさら、その定着が薄くなるまで、その名で呼ぶのが妖精のしきたりだった。
『俺は、そのまま。愛称で、ルノン』
『ボクは、彼が名付けてくれました。シディ、と』
『わたしはニーアです! ナリちゃん、ニーアって呼んでくれたんです! ニーアって、ニーアってっ』
 きゃああ、と嬉しげに声をあげてはしゃぐニーアは、赤く染まった頬をちいさな手で挟み、ふるふると首を振って喜んでいる。別れたあと、無視されていたという関係は大幅に改善されたらしい。それは喜ばしいことなのだが、もしかしてこの状態のままニーアの報告が成されるのだとしたら、その間、妖精はちょっと外に出ていたい、と思った。落ち着いてくれることを願おう、と思いながら溜息をついていると、じっと見つめてくる視線に気がつき、妖精は舌打ちをする。
『なに、ルノン』
『君はなんて呼ばれてたのかな、と思って。教えてくれるよな?』
 妖精は、改めて舌打ちをした。言いたくない、というか、絶対に口に出したくないのだが、誤魔化しきれないことは分かっていた。どうしたものかと眉を寄せながら考えると、耳の裏側でほわほわした甘い声がよみがえる。あの声。あの響き以外にあまりそう呼ばれたくないのだが、すでに妖精の存在にそれが定着してしまっている以上、仕方がないことだろう。笑ったらお前ら呪う、と本気の前置きをして、妖精は告げた。
『リボンちゃん』
『……ぶはっ』
『呪われろおおおおおっ! お前の羽根! まだら模様になれ!』
 耐えようとはしたのだろう。告げられた瞬間、即座に口に両手を押し当てて堪えたルノンの努力は、しかし数秒しか持たなかった。吹き出した瞬間に本気の絶叫でルノンを指差し、呪った妖精の隣で、ニーアがおろおろと困っている。うつくしい半透明の金の羽根が、濁ってまだら模様になるのを気にも留めず、か、かわっ、かわいいっ、と言ってルノンは笑い続けていた。それを忌々しそうに睨み、妖精はぎろりと、我関せずとぼんやりしていたシディに視線を移動させた。
『……アンタは、なぁに辛気臭い顔してんのよ、シディ?』
『ええと……可愛い名前を頂きましたね、リボン……ちゃん?』
 にこりと笑って告げるシディに、妖精はぶつんとなにかが切れる音を聞いた。うふ、と笑みを深める妖精の服の裾を、ニーアが慌てた様子でぐいぐいと引っ張る。
『せ、先輩、せんぱいっ! シディくん、いま、褒めてくれたんだと思います! だから怒っちゃいけないと思うんですっ!』
『アタシが怒るか怒らないかはアタシが決めるアタシのことでしょうがーっ!』
 口出しすんなーっ、とニーアの手から服の裾を取り返そうとしながら怒る妖精の前に、すとん、とばかりシディが降り立つ。そのまま、視線さえ向けない顔を、覗きこむ。
『ええと? 本当に可愛いと思っていますよ?』
 シディの手が妖精の頬に触れ、穏やかな仕草で顔の向きをニーアから己に向けさせた。視線が合う。満足げに笑って、シディがふわり、風を抱いて羽根を動かした。
『とても似合うと思います』
『……近い!』
『きゃあああ! リボン先輩! 蹴っちゃだめですよっ!』
 ぶわああぁっ、と羽根の先まで緊張させてシディを蹴飛ばした妖精に、ニーアが悲鳴交じりの注意を飛ばす。シディは蹴られる理由がまったく分からない顔つきでよろよろと空を避難し、呆れた顔つきで見守る国王の傍で、安心したように脱力した。
『ボク、今褒めたつもりなんですが……難しいですね』
「……これ以上、リーちゃんの怒りで被害が増える前に、報告会しよっか」
 よしよし、女心は難しいよなぁ、と苦笑しながら癒しの力を指先に込めてシディのことをそっと撫で、国王はよしじゃあ、とやや張り詰めた室内の空気を震わせた。
「報告、誰からにしようか。……いつもは、だいたい到着順だけど」
『アタシが最後なら順番なんてどうでもいいわ』
「……じゃあ、ニーア。ニーア、おいで。お話して?」
 国王に招かれるまま、その前までニーアが飛んで行く。すっかり陽が落ちて暗くなった室内に、その存在はほのかな灯りとなった。妖精の光を暖炉の熱のように浴びながら、国王はそれじゃあ、とニーアに向かって問いかける。
「教えて? 君の旅が、どんなだったか。誰を導き、どう思ったのか」
『はい。それでは、お聞きください』
 ワンピースの裾を手で摘んで、ニーアは舞台挨拶のような一礼をした。ぱっと明るい表情で顔をあげ、胸の前で両手を組み、息を吸う。
『わたしは、ニーア! 案内をしたのは花舞の国の、ナリアン!』
 うふふっと幸福を咲き零すように笑いながら、ニーアはその場でくるりと回る。
『ナリちゃん、ナリちゃん! とってもすてきなひと! ナリちゃんはね、とてもやさしいの。優しくて、傷ついてしまって、それでも優しくあることを辞めなかった強いひと! 一目見て、すぐに分かったわ! わたし、このひとをとっても好きになるってこと! ナリちゃんがね、とっても世界に愛されてるってこと!』
 差し出された国王のてのひらの上でとんとん、と靴音を鳴らし、ニーアはひらんと花びらのように空へ舞い上がった。そのまま、書きもの机や椅子の背もたれ、放置された本の表紙の上や羽根ペンの先に、とん、とん、と身軽く移動しながら告げて行く。
『ナリちゃんはね、悲しかったの。とても、とても辛いことがあったの。だから、はじめは迎えに行ったわたしのこと、見てくれなかった。お話、してもくれなかった。何度も、何度も話しかけても、だめだった。でもね、わたしは諦めなかったの。だって分かったんだもの! 一番さいしょに目があった時から、ずっとずっと、分かっていたんだもの! 満天の空に咲く星のひかりより、木漏れ日にくすぐられて目を覚ます花より、うつくしく磨かれ奏でられていく音楽より、きれいに洗われて砕けた砂漠の砂より、森の奥で音もなく降り積もる雪より、ずっとずっと、ナリちゃんはすてきなひと! 愛されていたの! すぐにわかった! 人に、愛されて育てられたこと! 世界に、愛されて育てられたこと! その目が悲しみに曇っても、口が、苦しさで噤まれてしまっても、心はまっすぐ透き通っていたこと! でも時間がなかった。悲しさが落ち着いて、苦しさが薄れるまで、待ってあげられるだけの時間がわたしにはなかった……』
 暗闇に、金の軌跡をひきながら妖精は歌う。
『ナリちゃん。優しいナリちゃん。一刻も早く、学園に行って欲しかった。ナリちゃんの体をむしばむ病は、王宮魔術師の処置で落ち着いていたけれど、でも、消すことはできなかったから。いつ、またナリちゃんを苦しめてしまうか分からなかった。魔力が目をさまして、魔術師のたまごになったばかりの、すごく不安定な時期なのに! 怖かった。ナリちゃんがこれ以上、悲しく思うのも、辛く思うのも。痛いのも、ひとりで我慢してしまうこと、ぜんぶぜんぶ、怖かった! わたしは言ったの。学園へ行ってって。ナリちゃんにお願いしたの。旅に出て、できるだけ早くって!』
『……ねえ、ニーア。だからなんでアンタは、落ち着いて動かないで飛びまわったりくるくるしたりしないで、普通に話さないの? できないの? そうなの?』
『ナリちゃんは初めてわたしをちゃんと見て、なにか言おうとしてくれた。でも、その前に、ナリちゃんを愛する風がわたしを怒って、国境まで吹き飛ばして……あ、そこでリボン先輩と、先輩のソキちゃんと会って、しばらくは一緒に旅をしたの!』
 ソキ、という名に、なぜかシディがぴくりと反応をした。ん、と訝しげに眉を寄せて考え込むシディを、物珍しげにルノンが眺め、どうしたんだよ、と話しかけている。頭が痛そうな妖精の呟きは、ニーアの耳に届かなかったらしい。角砂糖、とっても美味しかった、とうきうきした声が告げ、そこから語られるのは妖精も知らない、ニーアとナリアンの旅路だった。ナリちゃんはね、ナリちゃんがね、と囁く響きはよろこびに満ちあふれ、その名を告げられる幸福にとろけていた。三十分以上もかけてようやく語り終え、ニーアはぺこり、服の裾を摘んで己を遣わした王へ一礼を送る。
 語られる旅路に、無事に到着して本当によかったよなあああああ到着した途端にナリアン倒れたから俺砂漠からフィオーレ呼んだけど、と安堵のあまりにぐずって泣きながら鼻をすすっていた星降の国王は、ふう、と息を吐いて心から告げた。
「おつかれさま、ニーア! ニーアも、よく頑張ったな!」
『いいえ! ナリちゃんの為なら、これくらいのこと!』
「そっか、そっか。よかったなぁ……!」
 花嫁の父ってこんな感じよねたぶん、結婚式ちゃんと覗いたことないけど、という感想を抱きながら、妖精はごく冷静にニーアと星降の国王の様子を観察した。ひとしきり安堵に泣いて、ようやくスッキリしたのだろう。はあ、と明るく息を吐きだした青年が、じゃあ次は、と視線を彷徨わせた。
「と、じゃあ、シディ」
『はい』
 呼ばれて、返事をする声がどこか強張っている。なにか旅の間、よくないことでも起きたのだろう。思わず身構えて聞く仲間たちの視線を受けながら、シディは背をぴんとただし、国王の前に恭しく舞いおりた。そして、告げる。
『ボクの名は、シディ。案内をしたのは、砂漠の国の……』
 ぐっと、なにかを思い出すように一度目が閉じられた。数秒。潔く開いた瞳が、まっすぐに星降の国王を見る。
『砂漠の国の、彼の名を、ロゼア』
 あのね、あのね、リボンちゃん。砂糖菓子のように甘くとろける声が、妖精の中でよみがえる。瞬間、妖精はなにも考えられずにシディの元へ突進し、手を伸ばしてその羽根を掴んでいた。がっ、と勢いよく引っ張る。
『ちょ……っと、待ちなさい』
『えっ、えっ……? あの、その前に羽根、羽根を離し……!』
『アンタ、いま、なんて言った? 誰って言った? 誰って……誰って言ったっ!』
 痛ぁっ、と声をあげて抵抗するシディの羽根を片手で掴んだまま、もう片方の手で胸倉を掴みあげ、妖精はすわった目でシディを睨んだ。
『アンタ、いま、ロゼアって言わなかった……? ロゼア……? ロゼアって、まさかあのロゼア……?』
『言いました、けど……ど、どのロゼアでしょう』
『決まってんでしょう! ばかっ! ソキのロゼアよ! 砂漠の国の『花嫁』、アタシの迎えに行った魔術師のたまご! アタシの! ソキの! ロゼアのことかって聞いてんのよーっ!』
 どういうことだっ、と怒りながら羽根をぐいぐい引っ張ってくる妖精に、シディはじたばたともがきながら言う。
『ソキさん、のって……宝石の? ロゼアが仕えていた、お屋敷の、お嬢様のっ……?』
『……ふ、ふふふふふふ』
 妖精は、ほの暗く笑った。砂漠の国、宝石、仕えていたお屋敷、名前がロゼア。ここまで一致していて、別人ということは、ありえない。そうかそうか、あのロゼアが。ふぅん、そうなの、とそこまでを笑いながら考えた妖精は、己の中の荒らぶる感情を、全て目の前の存在に叩きつけることにした。
『……お前の』
 ぽつり、と落とした呟きに、ニーアが青ざめて耳を両手で塞ぐ。付き合いの長い分、反応が早かったニーアと、よく分かっていない為にきょとんとしている星降の国王を、ルノンがオロオロと見比べていた。ちょっと、なんなんですか、と涙目でシディが口にしようとした瞬間だった。すうう、と息を吸い込んだ妖精が、力の限りに絶叫する。
『お前の! せいかーっ!』
『ひぃっ!』
『お前の! お前のロゼアのせいで! アタシが、アタシがどれだけ苦労したことか……! 一言目にはロゼアちゃん、二言目にもロゼアちゃん、ロゼアちゃんロゼアちゃんって……! そのくせ、探してやるから特徴を話せって言ったらあのボケなんて言ったと思うっ? 『ろぜあちゃんはですねーえ? ソキより身長おおきくてー、ソキより手がおおきくてー、とってもやさしくてー、とってもかっこういいんですよー、ろぜあちゃんねえ、すごいんですよー、つよぉいですしぃ、なんでもできますしぃ、ソキにいろんなこと教えてくれるんですー、ソキねえロゼアちゃんのだっことなでなでがいちばんすきなんですよしあわせなんですよーぉ』よ! アタシが! 聞いたのは! そんな頭に花咲いてるような完全主観の感想じゃなくて! 特徴! 特徴だって言ってんだろうがお前本当にって思いながら! アタシが! どんだけ苦労して! ロゼアの特徴を聞きだして探してやったと思ってんだあああああお前のせいかあああああああっ!』
 羽根と胸倉を掴んだままがっくんがっくん揺さぶられながら怒鳴られて、シディはすでに半分目を回している。酔う、と言い残して首ががくりと後ろに折れたので、意識が保たれているかも怪しかった。しかし、妖精は気に留める様子もなく、シディを力任せに揺さぶった。
『お前のせいで! アタシが毎日何回ロゼアの名前を聞いたと思ってんだああああっ! 朝起きたらロゼアちゃん、昼前にもロゼアちゃんがね? 昼過ぎて眠くなってほわほわしながらろぜあちゃんろぜあちゃんどこいったですかやぁんねむいですそきねむぅいー! ってぐずるし! 夕ご飯食べながらロゼアちゃんこれ好きですだのなんだの! 夜寝る前に! ロゼアちゃんはねえ本読んでくれたんですよソキねえロゼアちゃんのおはなしの声だいすきなんですよぉねえねえリボンちゃんおはなしして? だの! 延々と! ロゼアロゼアロゼアってあああああもおおおおおいまアンタの目の前にいるのはアタシでしょうがもっとアタシの名前を呼びなさいよアンタの案内妖精はアタシなのよ! アタシって! 思って! 何回髪の毛引っ張って反省させたと思ってんのよーっ!』
『……はっ、ちょ、ちょっと! シディ意識失ってる! シディの意識飛んでるから! もう許してやってくれよ!』
『先輩! 落ち着いて! お、落ち着いてええええっ!』
 それぞれ正気を取り戻したルノンとニーアが、妖精の元へ飛んで行ってシディを引きはがそうとする。しかし妖精の怒りは凄まじく、邪魔すんなと怒られてルノンも、ニーアもちょっぴり涙目だ。その様子を落ち着くまで見守ろうと決意しながら、星降の国王は、ふぁ、とあくびをする。



 入学式が、一応設定されていた予定の時刻より、一時間遅れそうだという報告を。入学予定者の中でソキがまっさきに受け取ったのは、そういった理由あってのことである。

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