熱が全身を包みこんでいる。とてもとても気持ちいい熱だった。ねむくてねむくて仕方がない気持ちですりすり頬を擦りつけると、くす、と笑みの気配がすぐ傍から響く。さらりと指先で髪が撫ぜられた。ソキ、ソキ。ソーキ。寝ててもいいよ。とんとん、ゆっくり階段を上る音がする。冷えた空気が一瞬だけソキの背を撫でたが、やぁん、と身をよじるよりはやくてのひらがそれをはらっていく。あたたかな、すこしだけ皮膚のかたい、おおきなてのひら。ぽん、ぽん、ぽん、と背を撫ぜて抱きしめ、抱き寄せなおしてまた撫でられる。ねむいな、ソキ。もうすこしで部屋につくよ。そうしたら、ねむろうな。囁く声に半分無意識でこくんと頷いて、ソキは瞼を下ろしたまま、肩口に頭を預けてふあぁとあくびをした。首筋を撫でて行くソキの吐息がくすぐったかったのだろう。くっと僅かに喉を鳴らし、あまく掠れた声で笑われる。
ゆっくり、ゆっくり階段が登られ、歩みが進められていく。足音ひとつしない、ゆったりとした仕草だった。熱に包まれ、守られたソキの体には、振動ひとつ伝わらない。ソキ、ソキ。眠りを導くような声で、時折、名前が呼ばれる。ねていいよ。だいじょうぶ。俺は、ずっと、傍にいるよ。離れないよ。だから大丈夫。ソキ、ソキ。告げられて、ソキはやあぁあう、と半泣きの声でぐずり、おろした瞼にきゅぅと力を込め、ぺたりと体をくっつけた。やだやだねない、ねないです。そきまだねない。いっしょいる、やだいっしょいる、です。うん、と頷いた声がやさしく緩んでいる。うん、一緒にいるよ。ソキ。俺はここにいるよ。ぎゅっと一度力を込めて抱きしめられ、片腕だけが離される。左腕でソキを抱いたまま、右手がごそりと服か、鞄を探っている音がした。やがて、かしん、と鍵の開く音がして、扉がひらく。
部屋に入るよ、という代わり、とん、と一度だけ足音を響かせて。それきりまた音のない歩みで、扉が閉じる。やっぱり一回埃を払って、換気して、ソキの部屋も窓を開けて空気を入れ替えて。明日かな。呟き、机にどさりと荷物が落とされる。さすがに、わずかに振動があった。ん、と声をあげるソキの瞼を指先がやわりと撫でて行く。だいじょうぶ、怖い音じゃないよ、ソキ。言い聞かせられて、ほわりと笑い、ソキは体の力を抜いた。なにか。だいじなことを。かんがえていた。はずなのだけど。かなしくて、でも、どうしても。しようとおもって。いた。ことが。あるはずなのだけれど。おもいだせない。とろとろと全身を温めて包み込み、守り切るぬくもりに、ぜんぶぜんぶ、とけていく。すこしだけ埃っぽい冷えた空気に、けふり、喉が渇いた咳をする。うゆぅ、とむずがるソキの頬を、あたたかな手が撫でて行く。
「……ソキ。寝る前に、お茶、飲めるか? ひとくち」
「やぁあそきいらないです……」
ここからはなれない。ちょっとも。ぜったい。やだ。くっついてすりすり体をこすりつけてあまえていっぱいあまえて、ソキはようやっと、そのぬくもりの名をくちびるにのせた。
「ろぜあちゃん、どっかいく、やぁ……や、です、よぉ」
「行かない。行かないよ、ソキ。……ソキ、ソキ、ソキ」
寝台がきしむ音がした。腰を下ろしたのだろう。そこへひとりきり、降ろされることはなく。ぎゅぅ、とやさしく、抱きあげた腕に力が込められる。首筋を撫で、頬に触れ、髪が梳かれ、すこしだけ額が重ねられた。安心しただろうに、腕の力が抜け落ちることはなく。そっと、背が、撫で下ろされる。ソキ、とすこしだけ掠れた甘い声が、耳元で名を呼んだ。
「俺に、どうしてほしいか、いえる?」
いや、だけじゃだめだよ。わからないだろ、とすこし困った風に告げられて、ソキはロゼアにぎゅぅと抱きついた。はなれないで。告げる。囁く。あたたかな熱が冷たさと決意をどこかへ遠ざけ、ねむたさに目隠しをされていて、望みだけが残っていた。ほんとうの、ほんとうの、ソキの望み。『花嫁』として整えられきり完成されてしまった思考の奥にある、教育も、立場も、理性も、感情も、なにもなにも届かない。触れられない。ソキの望み。ほんとうの、ねがい。
「ずっとずっと、ソキの、傍にいて、ロゼアちゃん……。ずっと、ぎゅって、して、いて……」
「うん。いいよ。……あとは?」
すき。すきです。すき。だから。ゆるく、ゆるく、息が吸い込まれる。
「ソキを。……ろぜあちゃん、の……て?」
「……うん?」
ソキ、もう一回。囁き問われるのにふあぁと息を吸い込んで、ソキはくてんと体の力を抜いてしまった。それは。ほんとうは。ぜったいに。いってはいけない、と、いわれていた、の、だが。でも、ほんとうは、ほんとうに、ソキが望んで、してもらいたいこと、だった。眠りに落ちるソキの頬を撫で、言葉を諦めたロゼアが苦笑する。じゃあ、ずっと傍にいるよ。ぎゅってしてる。おやすみ、ソキ。囁かれて、ソキはしあわせでしあわせでいっぱいで、うれしくてたまらなくなって、わらって、こくん、と頷いた。眠っている間、ずっとずっと、この腕の中にいられる。とろとろと熱にとけてしまいながら、ソキはふあぁ、とあくびをして、体をぜんぶロゼアに預けてしまった。
ずっと、が。いつまでなのかを聞くことは、なかった。
長期休暇も残り一週間を過ぎると、中間区に人が戻りはじめる。馬車でゆるゆるとした帰路を選ぶ者以外は『扉』が使えるので、中には忘れ物をしたと笑いながら囁き、気恥ずかしそうに出入りを繰り返す者もあった。『学園』の中でも特に空気が華やいで行くのはやはり寮であり、その中でも談話室は二ヶ月を寮で過ごした者たちが外の話を聞きたがったり、親しい友に久しぶりの再会を果たしては、口々に元気だったひさしぶり休みの間はどうしていたのうんあのね、と楽しげな囁きがそこかしこで弾んでいた。その一角。日あたりの良い窓辺に置かれたソファの周辺だけ、どこかゆったりとした空気が漂っている。ふと会話に一区切り打った者たちがそれに気がつき、なんだろうと目を向けるたび、数日前に戻って来ていた者、あるいは延々と寮住まいだった者たちが無言で首を左右に振った。
砂漠出身の者たちだけがどこか敬虔な眼差しをおくり、あとは全員口の中に砂糖をぶちこまれたような顔つきで沈黙する視線の先、ソファに座っていたのはロゼアだった。やや薄めの教本を片手に、ひかり降り注ぐあたたかな空間で文字を読み進めている。親指でぺらりとページをめくる手つきは慣れ切っていて、片手で本を読むことに不自由していない印象を振りまいていた。もう片方の手はなにをしているのか、探す前に誰もの視線の先に答えがある。ロゼアの膝の上に腰かけ、その体にしなだれかかって、ソキがすうすうと眠りこんでいたからだ。ソキがロゼアの傍で眠ること自体は、別に珍しくもなんともない。メーシャやナリアンとロゼアが話している最中、勉強をしている時、ソキはよく体力切れを起こしてお昼寝をするからだ。部屋からあらかじめ持ってきていたぬいぐるみを腕に抱き締め、あるいはロゼアの手を抱きこむようにして。
膝に頭を乗っけて枕にして、ろぜあちゃんおやすみなさいですよ、ナリアンくんメーシャくんもおやすみなさいです、とほわんほわんと囁き、そのままくったりと眠ってしまう。その体が横たわるのはソファである。ロゼアの腕の中では、ない。あまくしあわせそうな表情で安らいでいても。全身を預け切り、くたんと脱力し、すうすうと気持ちよさそうに腕の中で眠りこむ姿というのは、いままで一度も見たことがないものだった。それでいて、休みの間に急激に距離が近くなった、という空気感ではない。ロゼアはソキを腕の中に抱くことを、ごく自然に行っていた。寮生ならば誰もが、ソキを抱き上げて歩くロゼアの姿を見たことがある。だからこそ別に、慣れていてもそれを当たり前だ、とも思うのだが。砂漠出身者だけがうっとりとした眼差しをおくる中、他国の者全ての内心を代表するかのよう、寮長がうんざりと首を振る。
「あまやかしてんじゃねぇよ……」
はたして、あまやかしている、という言葉の範囲に含めていいのかという疑問はさておき、だいたいの者がそれにぎこちなく頷いた。聞けば、ソキは談話室に来るまでは眠そうにしていながらも起きていたそうなのだが、本を読むロゼアの隣でのたのたと瞬きを繰り返し、ふあ、とあくびをしてこう囁いたのだという。ろぜあちゃん、そき、ねむくなっちゃいました。ロゼアは一度、本にしおりを挟んで机におき、やわらかな笑みを浮かべてちいさく頷いた。うん、いいよ、ソキ。ねむろうな。ロゼアの手がソキの体を抱き上げ、膝の上に乗せる。
ソキはふあふあと笑いながらロゼアにぴったり体をくっつけ、ろぜあちゃんぎゅってしておやすみってしてくださいですよ、とあまくねだった。うんいいよ、してあげる。微笑んで、ロゼアはソキの体に腕を回し、ぎゅぅと抱きしめてから頬を撫で、囁く。目を細め。あふれる喜びを、微笑みに滲ませて。
「おやすみ、ソキ。いい夢を。……あとは?」
「あと、そき、ろぜあちゃんだけでいいです……」
「うん。わかった。……わかったよ、ソキ」
眠りこんでしまうまでは両腕で抱き締め、背を撫で、時折言葉を囁いて、ロゼアはソキを見守っていたのだという。すうすうと安定した眠りに入ってからは片手で本を読み進めながら、もう片方の腕でソキを抱き寄せ、気まぐれにそっと髪を撫でている。ゆっくり、ゆっくりと、ロゼアの手はソキに触れて行く。ふわふわしたやわらかな髪にも、熱を灯して行くように。全体を撫で、一筋を指に絡め、つややかな感触を確かめるように。指先で挟み、こすり、ふ、と吐息に笑みをはきだした。もぞ、と膝上でソキが身動きをしたからだろう。しおりを挟まずに本を閉じ、ソファにおき、ロゼアはソキの体を腕の中に柔らかく抱いた。ぽん、ぽん、ぽん、とてのひらが背を撫でていく。
「ソキ、ソキ。そーき。もうすこし眠ろうな。まだ起きなくていいよ」
「うゅ……ろぜあちゃん……」
「うん。俺だよ、ソキ。ソキ、ソキ。……おやすみ」
囁きに、ソキはロゼアの胸に頬を擦りつけるようにこくんと頷き、くちびるをちいさく開いてふぁ、とあくびをした。ソキ、そき。くすくす笑いながら、ロゼアの手がソキの首筋にそっと触れ、頬を撫で、髪を梳いて行く。額を重ねて笑みを深めながら、ロゼアは何度も己の腕の中、まどろむソキの名を呼んだ。ソキはふにゃふにゃとした声で何度か、ろぜあちゃん、そきろぜあちゃんがだいすきです、すき、ろぜあちゃん、と受け答え、やがてことんと意識を手放し、眠りこんでしまった。ロゼアにしなだれかかったまま。その腕の中から離れようともせずに。その腕の中、ぬくもり、囁かれる声。ロゼアの、すべてを。しあわせ、と告げるような、うっとりとした笑みを浮かべたままで。
無警戒の、信頼に溢れたくたくたの眠りを腕に抱きながら、ロゼアは何度かソキの頬を撫で、再び本を片手に読みはじめる。残念なことに、まだ読んだページより、読んでいないそれの方がおおい本だった。えっあれもしかして読み終えるまであの体勢なのいやまさかそんな疲れたら膝から降ろすんだよねという他国出身者らの疑問に、砂漠出身者が笑みを深めていいえそのままです絶対にね賭けてもいい、と即答した。即答だった。誰ひとりとして迷うそぶりのない言葉だった。ロゼアはそのまま、一冊を読み切るまでソキを腕の中で眠らせ。その場を動こうとはしなかった。
長期休暇も残りあとほんの数日。片手の指を折り曲げても余るくらいの日数になった所で、ソキは唐突にそれに気がついた。ソキ、もしかして、ちょっとロゼアちゃんに甘えすぎているのではないですか。やぁんとソキがもぞもぞする現在位置はロゼアの腕の中。二人がいるのは寮の中のロゼアの居室。その寝台の上、である。いつソキが眠たくなってもいいようにだろう。ロゼアの手の届く距離にアスルがおかれ、本や飲みもの、干した果物などもまとめて寝台の傍におかれた小さい机の上にまとめられていた。ソキの体調は回復しきらないままだ。パーティー後のように回復と悪化を繰り返すのではないものの、穏やかに落ち着いた状態から元気になりきることがなかった。食事とお風呂以外でも時々、そとにいきたい、と訴えるソキの為に、ロゼアは談話室にも連れて行ってくれるが、それ以外の場所を許されることはなく。
ソキは今日もロゼアの腕の中でうとうと、うっとりまどろんでいたのだが、なにかの拍子に詰まっていた砂時計が落ちるのを思い出したかのように、ほんとうに唐突に、それに思い至ってびっくりした。ねえ、ねえねえロゼアちゃんねえねえねえ、と抱き寄せる腕をぺちんぺちん叩きながら呼びかけると、ソキの髪を撫でながら視線を空にやり、眉を寄せ口唇を動かして暗記ものの確認をしていたロゼアの視線が、ふ、と降りてくる。赤褐色の瞳がやさしく、雫を落としたような瑞々しさでソキを見つめる。どうした、ソキ。ねむたくなった、と囁き問われ、頬を両手で包みこんで額を重ねられ、くしくしと爪先で肌を淡くひっかいていく悪戯に、ソキはきゃあきゃあと声をあげて首を振った。ちがうですぅーっ、と笑いながらロゼアの肩をぺちんぺちんと叩き、ソキはぷぷぅ、と頬を膨らませた。手の中でぷっとする頬に、ロゼアがくすぐったげに喉を震わせて笑う。
「ちがう?」
「ちぃーがーうーでーすぅー! あのね、ソキね、ちょっとあの……あまえすぎちゃってるです……」
「そんなことないよ。ねむろうか、ソキ」
即答だった。ついでとばかりに寝かしつけようとするロゼアの手にぽんぽん、と背を撫でられて、ソキはだからですねと続けようとした言葉をあくびに変えて、反射的にあたたかな腕の中にぴとっとばかり身を寄せた。すりすり肩に頬を擦り寄せて甘えると、てのひらがうっとりするような心地よさで、髪を何度も撫でて行く。はふ、と息を吐き出して、ソキはアスルはどうする、と問うロゼアに首を振っていらないです、と言った。アスルはロゼアにくっつけない時にさびしくないように抱き締めて寝るものだ。ロゼアが抱っこしてくれているなら、その熱の中に守られているのならば、基本的にはなくても平気なのである。
そき、ろぜあちゃんをぎゅってしたい、とうとうとしながらねだるソキに、ロゼアはうんいいよ、と頷いて片手を貸し出してくれる。腕の半ばまでをきゅぅー、と嬉しげに胸に抱きよせ、ふにゃふにゃとしあわせの零れる笑みで頬を寄せながら、ソキはふたたびきがついた。ちがうですちがうですこれじゃない。やぁん、と声をあげたソキに、ロゼアが不思議そうに首を傾げる。
「どうしたんだ? ソキ」
「ロゼアちゃん。だからね、ソキね、あまえるのがまんするの、もう一回しようと思うですよ」
「しなくていいよ」
即答である。ソキはふあふあのしあわせにねむたくなりながら、あれ、と思って首を傾げた。
「ロゼアちゃん。ソキ、ひとりでもいろいろ、できるですよ?」
「うん、知ってるよ。ソキはたくさん頑張ったもんな。偉いな、ソキ」
ひとりで歩けるし、授業も行けるもんな。体調がよければ。髪を撫で、頬に触れながら囁くロゼアに、ソキはそうなんですよぉ、と誇らしげな気持ちで頷いた。お膝の上に抱っこして寝かしつけられつつ。抱き寄せられて撫でられてうっとりしながら、ソキはでもでもぉ、と寝ぐずる声で囁いた。
「ソキ、もう、『花嫁』じゃないんですよ……」
だって、ロゼアちゃん、もう『傍付き』じゃないって言ったもん。いったです。ろぜあちゃんいった。拗ね切った声で告げられても、ロゼアはそうだな、と頷いた。泣きそうに震えるソキのことを抱き寄せ、落ち着かせる手つきで背を撫でながら。
「俺が、そうしたいから、そうしてる。……何回でも言うよ、ソキ。俺は、俺がそうしたいから、ソキの傍にいる」
「……ロゼアちゃんは」
うん、と頷く。ロゼアに手を伸ばして、ソキは指先をその頬に触れさせた。
「ロゼアちゃんが、ソキの……ソキの、そばに、いて、くれるですか……?」
『傍付き』ではなく、『花嫁』でもなく。ロゼアが。ソキの。傍に。胸があまくふるえる。涙が満ちて行くくらい。ソキはうっとりと息を吐きだした。それは、なんて、しあわせなことだろう。ロゼアはソキの指先にくすぐったげに笑いながら、そうだよ、と頷いてくれた。その瞳に、ソキと同じ恋はない。息をするだけで全身がしびれるほどしあわせなのは、よろこびにみちるのは、やはり、ソキだけだった。目をうるませて頷き、ソキは静かに息をはく。眠りを導く腕にとけてしまいながら、ソキはうとうとと瞼をおろした。
「ロゼアちゃんは……」
「……うん?」
「……ラーヴェみたいです」
その瞳に恋はなく。それでも、『花嫁』ではなくなったソキの母の元にあり続けた男に。とてもよく似ている、と思った。最愛の私の宝石。ソキの母への想いをそう告げて微笑む、『傍付き』であった男に。なんだそれ、と笑うロゼアに答えようとして、ソキはふあぁとあくびをした。ぽん、ぽん、とロゼアの手が背を撫でて行く。おやすみ、ソキ。告げられてソキはうっとりと、もうすこしだけ、と己に言い聞かせ、その熱の中で眠りを引き寄せる。
さらさらさら。どこかで砂の音がした。
さらさら、さら。ことん。さらさらさら。ことん。さらさら。ことん。繰り返し繰り返し守り抱き傍にいるよと囁きながら。いとしいこえがわらいながら。ソキ、ソキ、とどこかで呼ぶ。かわいい。いとしい。俺の、宝石。愛告げるようにどこか遠くで囁かれ。ゆるやかに、穏やかに、ソキの魔力は安定していく。眠りからさめれば夢は消え。ソキがそれを覚えていられることは、なかった。
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