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 ソキの旅日記 十七日目(深夜)

 泣き叫ぶように明滅する光が、進む道を照らし出している。闇を縫うように飛行して行くそれを、一人の女性がそれを追いかけていた。光にまとわりつかれながら、女性はまるで耳元で怒鳴り続けられているかのよう、顔をしかめて首を振った。
「ちょっと落ちついてください。心配なのは分かりましたから」
 ふぁ、とねむたげなあくびを一つ道に落として行きながら、女性は小走りに進む足を止めようとはしなかった。いくつもの細い路地を抜け、はやく、はやくと呼ぶ妖精に導かれて進んで行く。いくつ、角を曲がっただろう。大きな通りの片隅で足を止めた女性から離れ、妖精は倒れ伏す少女に向かって飛んで行く。疲れた様子で歩み寄りながら、女性は意識の無い少女を覗きこんだ。
「あら……あら、あら?」
 意図せぬ所で知り合いの少女に巡り合った魔術師は、どうしたものかと首を傾げる。案内妖精が連れてきたのだから、この少女が旅をしている途中の魔術師の卵であることは間違いないのだが。単純に回復させたら戻るつもりだった女性は、こんなことなら馬車で来るんだったとぼやきながら、意識の無い少女を抱き上げた。
「……うーん、どっかで馬車拾いましょうね。歩いて帰るのは、さすがに……ああ、もう」
 きゃんきゃんと騒ぎ立てる妖精に顔をしかめ、女性はちゃんと治療も回復もさせますったら、と溜息をついた。
「ただ、王宮に戻ってからにしましょう。もー……倒れてるのがソキちゃんだって分かってたら、ちゃんと色々用意してきたのに」
 意識を無くした少女をよいしょと抱きなおし、魔術師の女性はよしよし、とあやすようにソキの背を撫でた。
「もう大丈夫ですからね。このラティちゃんにお任せあれ、ですよ」
 とりあえず帰ったら白魔術師を殴って起こして回復してもらいましょうね、と言って、王宮魔術師は通りがかった馬車を止め、砂漠の国の城へ、行くようにと告げた。

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