「あれ、フランシスは? なあ菊、フランシス知らないか?」
「いえ、見ておりませんが……どこでしょうね。お師匠さま、知りません?」
「あ? フランシスなら、会議終わったと同時に飛び出してったけど」
「なんだよー。殴ろうと思ったのに」
「アーサーさん」
「なんだ?」
「めっ!」
「っ……!」
「……俺の弟子って実は馬鹿なんじゃねぇの?」
「聞こえておりますよお師匠さま」
「び、びっくりした……。なんだよ、俺こどもかよ」
「こどもですよ。フランシスさんがご機嫌だからって、理由なく殴ったりしたらいけません」
「フランシスが機嫌が良いのが殴る理由になるじゃん」
「なりません! お師匠さままで、なにを仰るのですか」
「……なるよなぁ、アーサー」
「なるよなぁ、ギル」
「なるなる。菊、なんでならないんだ?」
「本気で分かってらっしゃらないとか意味が分からなくてじいさん眩暈がします……ええい二人とも! そこになおれっ!」
「あれ? ねえ、アルフレッド。ごらんよ、あれフランシスさんじゃない?」
「あ、ホントだ。おーい、フランシスー! そんなに急いでどこに……」
「……聞こえなかったみたいですね。珍しいこともあるものですよ」
「そうだね、ピーター。うん、急いで聞こえなかっただけだと思うから、あんまり落ち込んじゃダメだよ、アルフ」
「……無視されるのはキライなんだぞ」
「好きなヤツはいねーですよ。ピーターも知らんぷりされるのはだーいきらいです! だからはやく認知するですよー」
「ピーター・カークランドの認知ならしてるじゃないか」
「『国』として認知しろ、ですよー!」
「ピーター? ワガママ言うとアイス買ってあげないよ」
「うぅ……僕、今日はキャラメルリボンチョコチップアイス食べる予定なのですよ」
「うん。買ってあげるからね。今日はもうそれはおしまいにしようね」
「ううー!」
「聞きわけないと、アルフレッドも連帯責任でアイスなしだよ」
「なんでだいっ! ちょっとピーター、今すぐおしまいにするんだぞっ! アイスアイスアイスー!」
「マシュー兄ちゃんは時々すんごいイジワルなのですよー!」
「そうだぞっ! 俺のアイスまでなしとか意味が分からないんだぞ!」
「……二人ともなしにしちゃうよ」
「にいちゃごめんなさあああああいっ!」
「シェリ」
「カオ……ル」
「会議は終わったんだろう? じゃあ、ほら」
「……なんですか、この手」
「……」
「……カオル」
「……手を」
「……」
「……シェリ、あまり困らせないでくれ」
「誰のせいだと、思ってるんですかー」
「me」
「……っ」
「……シェリ」
「……うい」
「今日は、天気が良い」
「はい」
「だから、すこし遠回りして帰ろう?」
「……カオル?」
「ゆっくりでいい。焦らなくて良い。怖がらなくても、良い」
「カオル」
「待ってる。だから」
「……」
「自分で、そうだと思ったらもう一回」
「……」
「俺に、告白して」
「……っ」
「……好きだ」
「っ!」
「言わないでごめん。好き」
「……カオル」
「好きだ、シェリ。俺はもうずっと、君に恋してる」
「……嫁に出す気分ってこんなあるか」
「香君、どう考えても婿だと思うけど」
「婿でも嫁になることもあるある」
「自分に置き換えると納得できるけど……ギルどこ行ったのかしら」
「さっき向こうで菊に正座させられてお説教されてたある。一時間後に迎えに行くよろし」
「え、ギルなにしたの?」
「フランシスが機嫌良いと殴りたくなるとか、なんとか」
「……」
「……しょうがねぇ奴らある」
「本当にね……あら、噂をすれば」
「ん?」
「ほら、窓の外。中庭」
「……おや」
「もう、フランシスったら! 女の子待たせるなら、あんな場所じゃなくてどこかカフェででも待ち合わせすればいいのに!」
「……」
「……ヤオ?」
「……いや」
「……?」
「今日は天気が良いある」
「え、ええ」
「あの中庭は、日当たりが良い。眠るのにはちょうど良いのだろうよ」
「え……?」
「……」
「……!」
「……」
「……そう、ね」
「ああ」
「きっと、そうね」