BACK / INDEX / NEXT

 1 優しい夢を知っていた

 ナスカの被害は大きかった。星ひとつが徹底的に破壊され、もう二度と地表には降りられないだろう。人であっても、ミュウであっても、それは同じことだった。消滅の瞬間まで宇宙に存在するだけの星は、けれどそれでよかったのかも知れない、と助かったミュウたちに思わせた。ナスカは、いまや墓標だった。星ひとつがそのまま、大切な仲間たちの眠る墓なのだ。百人以上の仲間が、命を落としてしまった。
 それでも二百人にならなかったのは、ブルーの有無を言わせぬ撤収作業のたまものだった。また、シロエとジョミーによるメギド陥落も大きかっただろう。現ソルジャーとその左腕がたった二人で敵の本陣まで突っ込み、そして最終破壊兵器と呼ばれたメギドを宇宙に沈めてみせたのだ。その効果は絶大だったのだ。なにより人類統合軍の足並みが揃っていなかったこともあってか、それからの撤退は早かった。
 そして攻撃がなくなってしまえば、それ以上の人為的な危険は訪れない。ジョミーたちはナスカからの撤退に総力を尽くすことができ、結果として死傷者の数を抑えられたのである。それでもやはり、被害は大きかった。母船シャングリラを含め、現在ナスカ付近に浮かぶミュウたちの船は大小含め二十艇程度で、そのうち生活スペースがあるのは僅かに三船。他はどれも移動をメインにした船だった。
 幸いなことにシャングリラはかつて巨大な『家』だったから、ミュウたち全てが移動してきても暮らせる広さがある。かくしてナスカから離れたミュウたちは、現在シャングリラに集団出戻りの真っ最中なのだった。



 一番不足しているのが医療品ではなく食料だと分かった瞬間の、現ソルジャーの表情と言ったら笑いをこらえるのが大変だった、と長老たちは口をそろえる。もちろんミュウたちは思念でも意思を共有しあえるので、その時笑いをこらえていたからと言って、ジョミーが本当に『笑われなかった』わけではないのだが。今もシャングリラの廊下を早足で歩いていくジョミーに、向けられる仲間たちの視線は生暖かい。
 呆れ半分、微笑ましさが半分なのだろう。恥ずかしさに顔の半分をマントで隠しながらたかたかと、歩いているというより小走りに移動しているジョミーの後を追いながら、シロエはやれやれと器用に肩をすくめてみせた。こちらも同じく、小走りになりながらの仕草なので、なんとなく相当器用である。
「そんなに恥ずかしいなら、徒歩じゃなくて転移しちゃえばいいと思うけど?」
「だってっ! そうしたら船の中の様子、ゆっくり見て回れないじゃないかっ!」
 八つ当たり気味の強い語調に、シロエは眉を吊り上げてみせた。ゆっくり見たいなら小走りでなくすべきだと思うのだが、それはそれ、これはこれでもう立ち止まれないらしい。だってお腹が空くのってすごく嫌いなんだ、としょんぼりした思念がジョミーからもれるのに、シロエは深くため息をついた。この人ホントにぼくよりも年上なんだろうか、とシャングリラに来て何度思ったのかは、もう数え切れない。
 シロエと同じく、こぼれたジョミーの心を拾ってしまった若者は、廊下の端にしゃがみ込んで肩を震わせる。すると、ますますジョミーは恥ずかしがって足を速めてしまうので、心の遮蔽が疎かになった。悪循環も、ここまで来るとどうしようもない。本格的な競歩に突入しながら、シロエは律儀に付き合って後を追いつつ、ところで、と問いかける。
「その、食料ですけれど。補充、どうします? 潜入部隊に久しぶりに仕事を上げるのが一番だと思うけど、怪我してて動けないのが多いし……ジョミーがお腹すいたって泣く前にどうにかしないと、ブルーがうるさそうだしね」
「泣かないよバカシロエっ!」
「誰がバカだよっ、ばかジョミー!」
 そのまま廊下の真ん中で、バカって言った方がバカ、という非常に幼い水掛け論に発展しかけたジョミーとシロエのじゃれあいを、止めたのはリオだった。はいはいこんな公道でケンカするのはやめましょうねー、とまるで幼子を宥める響きで声をかけながら、二人の間に割って入って距離を取らせる。とりあえず引き剥がすこと。それがケンカをおさめる、一番の近道なのである。リオ、と二種の声が重なって響く。
「だって最初にバカって言ったのはジョミーなんですよっ! ぼく悪くない!」
「シロエがいつまでも変なことでからかうからだろっ!」
『二人とも良いコだから黙りなさい』
 そういう時のリオに逆らったらいけない、というのはシャングリラ内の大常識である。冷えた空気を存分に漂わせながらの一言に、ジョミーもシロエもぴたりと口を閉ざし、廊下のざわめきも耳が痛い静寂へと変化した。すぐさま現れた結果にリオは満足そうな笑顔を浮かべ、分かれば良いんですよ、と普段通りの優しい声を響かせる。それが、あまりに普段通りの柔らかさであるからこそ、なおさら恐いのだが。
 カタカタ震えて実を寄せ合う二人に微笑を向けながら首を傾げて、リオは食料のことなのですが、とソルジャーの右腕らしい発言をした。
『早急に補充する必要があるのは確かです。そこでソルジャーにお願いがあるのですが』
「リオは行っちゃダメだからね。大体、今だって安静にしてなきゃいけない筈だろう」
 目を細めて告げられた言葉に、リオは幸福そうに微笑んで私は船に残って作業をしますよ、と言った。ジョミーは文句を言おうとして口を開きかけ、しかしすぐに諦めて肩を落とした。確かに今、リオの有能さは混乱したシャングリラを落ち着かせるために必要なのだ。視線をさ迷わせて言葉を探し、ジョミーは絶対に無理しないなら、と条件付でリオの職場復帰を認めた。ありがとうございます、とリオは嬉しげに笑む。
 そして求められるままに、その『お願いごと』を口に出した。
『現在位置から北に向かい、通常速度で半日移動した所に、人類の辺境調査部隊が滞在する小惑星を発見しました。現在シャングリラはその方角に向かって移動中なので、進路に問題はありません。警備レベルは低めで治安も安定しており、潜入もしやすそうだということで、食料を補充しようと思います。お願いがあるのは補充に向かうメンバーのことで、ナスカのこどもたちに行かせたらどうかと思いまして』
 途中まで順調に頷いていたジョミーの動きが、最後の最後で停止した。次の衝撃を正確に予測したシロエは、ジョミーから二歩ほど距離を取り、両手でしっかりと耳を塞ぐ。リオはそんなシロエの動きが見えているだろうに、にこにこと笑いながら答えを促した。
『ジョミー。いえ、ソルジャー・シン。許可をお願いできませんか?」
「だ……だっ」
『だ?』
 第一声で答えなど分かろうものなのに、それでも促すのがリオだった。ハッキリ言ってくれないと分かりません、とにこやかに告げられて、ジョミーはふるふる震えながら大絶叫を響かせる。
「ダメに決まってるだろーっ! なんだそれっ!」
 危ない恐い絶対だめっ、とびしりと言い放たれても、リオの笑顔は崩れなかった。耳から手を離したシロエが息を吐く中で、リオはいいじゃないですか、とジョミーを説得する。
『言ったでしょう? 治安も安定していますし、警備のレベルも低い。辺境調査部隊は家族を連れて赴任しているのが大多数ですから、ちいさなこどもが歩いていても怪しまれません。かえって大人が集団で歩いている方が、仲間意識の強いコミュニティでは目立つんです。それに、トォニィたちならなにかあった時にサイオンを使って切り抜けることが出来ます。彼らの力の強大さは、もう分かっていることでしょう』
 それに、他に近くで食料が補充できる星がないんです、と言われてしまえば、ジョミーは上手く反論することが出来ない。言葉に詰まって困っていると、リオは笑いながらもちろんこどもたちだけで行かせるわけではありませんよ、と王手をかけてきた。
『ちゃんと信頼できる引率が付きます。経験豊富で力も強く、本当になにかあったら全員を連れ、シャングリラまで戻るくらいのことならできる方です。ね、安心でしょう?』
「ねえそれ嫌な予感がするのは僕だけなの?」
 ぼそり、と呟かれたシロエの的確な突っ込みは、残念なことに考え込むジョミーの耳には届かなかったらしい。ジョミーは今現在、大切なナスカのこどもたちを想う親心と、ミュウ全体に向けるソルジャーの親愛が天秤にかかっていて、それ所ではなかったのだ。やがてジョミーはうーっ、とほとんど泣きそうなうめき声を上げながらも、今回だけだからねっ、と許可を下した。リオの笑みが、してやったり、と深くなる。
『二言はありませんね?』
「ないよ! 仕方がないだろっ。どうせぼくが一緒に行くって言っても、誰も許してくれないんだろうしっ」
『そうですね、その通りです。さて、こどもたちを引率して行ってくださる方なのですが』
 その怒りの受け流され方で、はじめてジョミーは気が付くものがあったらしい。引率する者の名前を聞いていなかった不安を覚えながら、ぎこちなくリオに向かって首を傾げる。
「あ、あのさ、リオ? なんか怒ってない、かな」
『もちろん怒っておりますよ。安静にしていなければいけないのは、私もそうですがあなたもですから。ねえシロエ』
「この状況で横になって休んでろって言って、休んでくれる人じゃないから困るんですよね」
 まるで他人事として自分は悪くないことを主張するシロエに、ジョミーからは裏切り者を見る視線が向けられた。しかし、それくらいでひるむシロエではない。天使のように可愛らしい微笑を浮かべて、無言で首を傾げてみせた。うわすごいムカつくーっ、と叫ぶジョミーの肩を叩いて落ち着かせて、リオはまあとりあえず怒るのは引き分けとして止めて差し上げますけれども、と流れる水のように言い放つ。
『見回りが終ったら、素直にドクターのところに行ってくださいね。早くしないと、ドクターからソルジャー捕獲部隊が差し向けられますよ?』
「別に大丈夫だって言ってるのに……まあ、うん。分かったよ。覚えておく」
 強い薬でやっと発熱を抑えている状態の、どこか大丈夫なのかを、リオとしては小一時間くらいかけて聞いてみたいものなのだが。深呼吸をして怒りたい気持ちを押さえ込み、リオは当面の問題を解決してしまうことにした。話を戻しますけれど、と苦笑して、リオは食料補充部隊の『引率』をしてくれる『誰か』をジョミーに教えた。
『ブルーが連れて行ってくれるそうです』
 ぐらりと眩暈を起こしたのは、なにも薬の効き目が薄くなったからではない筈だ、とジョミーは思った。たっぷり十秒ホワイト・アウトした視界をなんとか元に戻して、ジョミーはなんでっ、と疑問の声をあげる。すると廊下の角から、その引率者本人が姿を現した。ジョミーの叫び声が聞こえていなかったわけでもあるまいに、まったく気にしない微笑みで姿を現したブルーは、手に小さい旗を持ってぱたぱた動かしていた。
 蒼い生地で作られた旗には、『シャングリラ食料補充部隊』の白い文字が、丁寧にも刺繍で入れられている。頭を抱えてしゃがみこんでしまったジョミーの元に歩み寄って、ブルーはにこにこ笑いながら問いかけた。
「おや、ジョミー。どうしたんだい? 頭が痛いなら眠っていなさい。休養は必要なことだよ」
「ぼくは今あなたを怒るかリオを怒るか、自分に怒るかシロエを怒るか考え中なので話しかけないで下さい」
「ぼく悪くない!」
 なんでそこにぼくの名前が入るんだっ、と元気いっぱい抗議するシロエを軽く睨みつけて、ジョミーは唇を尖らせた。だってどうせ分かってたくせに教えてくれなかったじゃないか、と飛んでくる思念に胸を張って、シロエは言ったけど聞いてなかったでしょうが、と返す。一応、事実である。固有名詞は出さなかったものの、それを示唆する言葉なら告げていたのだ。頭を抱えたまま、ジョミーは沈黙した。
「……え、やっぱり気が付かなかったぼくが悪いことになる、の、かな?」
「大丈夫、ジョミーは悪くないよ。そして安心して待っていてくれたまえ。食べものを手に入れてくるからね」
 ぱたぱた旗を揺らしながら言うブルーに、混乱したジョミーは涙ぐんで頷いた。とりあえずもう、それで良いことにしてしまったのだ。思考を投げたジョミーを見つめて、シロエは腕組みをして満足そうなリオにこそっと問いかける。それでさあ、と。
『なにが目的?』
『目的、とは』
『しらばっくれないでくださいね。いくら怪しまれないからといっても、ブルーとナスカのこどもたちだけで補充に向かわせるだなんて、どう考えてもおかしいでしょう。熱で頭ぐらぐらしてるジョミーは気が付いてないでしょうけれど、ぼくまで騙そうとしてもそうはいかない』
 厳しい目を向けてくるシロエにやんわり笑い返して、リオは役に立つのは良いことです、と言った。
『それにね。気が付いているでしょう? 今、仲間の中であのコたちの立場は微妙なんです』
 ナスカの、仲間たちの遺児であるという意識と、未知の成長や強い力に向けられる畏怖が混ざり合って、誰もが混乱している。落ち着いて存在を受け入れているのは長老たちの何人かと、新旧ソルジャーとシロエ、そしてリオくらいのものだろう。リオとて初めから受け入れていたわけではない。すこし考える時間を持ってはじめて、それでも『仲間』なのだと受け入れることが出来たのだ。シロエは、息を吐く。
『だから、役に立つ所を見せて受け入れさせようってこと? そう上手く行きますか?』
『いいえ、そうではなくて。そうなればいいな、とは思いますけれど。本当は、ただ単にこどもたちに息抜きをさせてあげたくて。……そうでなくとも、こどもは周囲の気配に敏感ないきものですから、サイオン能力の強い彼らはなおさらでしょう。混乱する思考に取りまかれて、平気でいるとは思えません。彼らは確かに強い。けれど、彼らはまだ幼いこどもです。その辺りを、きちんと分かっていなくては』
 向けた悪意に返されるのは、幼ければ幼いほど悪意なんです、と。ため息をつきながらリオが言うのに、シロエも頷いた。悪意を向けながらも、それでもこどもは愛を求めるいきものだから。周り中が敵だと思いこんでしまうのなら、それほど可哀想なことはなかった。まあ、今のうちに手を打っておいたほうが良いのは確かだよね、とシロエが言い切るより早く、四人の方に向かって走り寄ってくる者たちが居た。
 たった今話題をさらっていた、ナスカのこどもたちである。全員はちいさなリュックサックを背負い、ブルーと同じ黄色い旗をそこに刺している。微笑ましく見守る視線と、奇異なものを見る視線をちょうど等分で身に受けながらそのどちらも気にした様子がなく、トォニィは他のものが目に入らない様子でジョミーの元に駆け寄って行った。そしてしゃがみ込んでいるのを見上げ、どうしたの、と問いかける。
「グランパ。頭痛い? ええと……アルテラっ」
 きょろきょろと助けを求める視線をさ迷わせ、トォニィが呼んだのはアルテラだった。ツェーレンと手を繋いでいたアルテラは、ちょっとごめんね、と言い残して小走りにトォニィに寄ってくる。なにをするつもりだろう、と大人たちが見守っていると、トォニィはジョミーとアルテラをオロオロと見比べたあげく、しょんぼりと俯いてしまった。その行動の意味が分かったのは、アルテラだけだっただろう。ちいさな手が伸ばされる。
 ぽん、とばかりジョミーの頭に乗ったアルテラの手は、よしよし、と撫でるようにちいさく動かされた。
「いたいの、いたいの、飛んでいけ。いたいの、いたいの、飛んでいけ……ジョミー、まだ痛い?」
 ちょこ、と首を傾げて問いかけるアルテラに、ジョミーはとっさに言葉を返せなかった。目を見開いてアルテラを見つめ、トォニィを見つめ、それからすこし離れたところに立っているナスカのこどもたちを見つめる。ジョミーの喉が、引きつった音を立てた。あ、とやけにのんびりブルーが呟き、ジョミーの瞳からぼろりと涙が零れ落ちる。それを見たアルテラの動きが凍りつき、トォニィは叫びださんばかりに口を開けた。
 シロエはぎょっとしたようだが、ブルーとリオは泣いた理由に気が付いているようだった。なんとも言えない表情になって沈黙し、ジョミーの名を口々に呼びながら集まってくるナスカのこどもたちを、ひどく優しい目で見つめている。なんです、と響かない声で問いかけたシロエに、答えたのはブルーだった。ジョミーがね、と語る口調は優しくて、過去を思い出す甘い痛みに満ちている。
「この船に来たばかりの頃のジョミーは、状況が今のナスカのこどもたちに似ていた。……いや、受け入れない気持ちのほうが強かったのかな。周り中ジョミーを拒否する意識だらけで、受け入れられるまでは時間がかかった。ぼくはある理由でジョミーを表立って助けることはしなかったし、長老たちも目に見える優しさでは接してやれなかった。リオくらいなものだよ、ジョミーより年上で、普通に接していたのはね」
『ジョミーより年下のこどもたちは……一番最初に、ジョミーを受け入れてくれた『仲間』でした』
「……もしか、して」
 そのこどもたちというのは。息を飲むシロエに、リオはおごそかに頷く。
『ナスカのこどもたちの……ご両親です』
 今はナスカの星に眠る者たち。こどもたちが星の外に飛び出したのとは逆に、誰一人として助けることが出来なかった。脱出を拒否されたわけではない。ただ人類が放ったミサイルが、一番最初に爆発させたのが彼らのいた区域だった。それだけのことだ。涙をこらえた視線を向けて、リオはああいう風にね、と懐かしく笑う。
『よく、慰めてくれていたんですよ。カリナも、ユウイも……ハロルドも、皆』
 ご両親に教わったのでしょうね、と言うリオに、シロエはそれ以上言葉を発さなかった。頷く僅かな仕草さえ、静かな空気を壊してしまうようで、呼吸にさえも気を使う。だからシロエはそっと目を伏せて、優しい光景を脳裏に刻み込んだ。シロエにとってそれは一度目の光景でも、ジョミーたちにしてみれば二度目なのだ。泣きやめないジョミーに、ナスカのこどもたちは混乱する。涙が伝染して泣き出すものもいる。
 ブルーはそっと息を吐いてジョミーに近寄り、片膝をついて頭を胸に抱き寄せる。それまでこらえていた慟哭が、悲鳴のように響き渡った。かつて、ジョミーは優しい夢を知っていた。幸せにしたいと願ったこどもたちが成長して、ナスカという地で笑いながら生活している『夢』だ。それは、一度は叶ったものだったのに。どうして夢は、終ってしまったのだろう。そしてなぜ、もうどこにも残っていないのか。
「カリ、ナ……ユウイっ」
 きみたちを本当に、本当に幸せにしたかったよ、と。引き裂かれた想いが、どこまでもどこまでも、響いていた。

BACK / INDEX / NEXT