ちく、と針で指されたような痛みが、胸をずっと刺していた。眉を寄せたトォニィは服越しに胸に触れてみるが、怪我をした感じではない。服に棘が引っかかっているわけでもなさそうで、トォニィは隣を歩くアルテラの腕を引いた。きゃっ、と驚きの声をあげてすこしだけ後ろにつんのめり、怒りの表情でアルテラが振り返った。すると自然に、ツェーレンもタオキンもタージオンもコブも、ペスタチオもいっせいに立ち止まる。
すると引率をしているブルーも足を止めて、不思議そうな顔でトォニィを見てきた。いっせいに視線を向けられて、ちょっと相談したいだけだったトォニィは足が引けてしまうが、呼び止められたあげくに転びそうになったアルテラはそれを許さなかった。逆に手を伸ばしてトォニィの手首を捕まえると、険しい声でなに、と問いかけてくる。それがあまりに恐いので、トォニィは軽く視線をさ迷わせながらえっと、と口を開く。
「なんかこの辺が痛いんだけど、怪我してないか見てくれないかなって」
「……あたしに?」
うん、と頷くとアルテラはやけに嬉しそうな笑顔を浮かべ、ほんとトォニィったら一人だとダメよね、と言った。むっとしたトォニィがじゃあいいよ、と言い返すより早く、アルテラの手が伸びてきて服の上からぺたぺたと触ってくる。特に異常はないようだった。あれ、と首を傾げながら、今度は手の辺りにだけサイオンを発生させながら触っても、怪我しているようには感じ取れない。アルテラは沈黙した。そして。
「風邪かしら。トォニィ、ちょっと」
返事をかえすよりはやく、ごち、とおでこがぶつかった音が場に響く。反射的に動きを凍りつかせたトォニィからぱっと手を離して、アルテラはますます首を傾げた。そして、それからようやくブルーを振り返り、助け求める視線で見上げる。トォニィ以外のナスカのこどもたちからも同じ視線を向けられて、ブルーはくすくす笑いながらしゃがみこんだ。そして額を両手で押さえ、赤い顔で沈黙するトォニィを笑顔で手招く。
おいで、と警戒心の強い猫に対する慎重さで囁けば、トォニィからは軽く睨みが向けられたものの、無言で近づいてきた。なんだよ、と呟いてじーっと睨みあげてくる姿は、幼いからこそ恐くもなんともなく、ひたすら可愛らしい。なんで敵視されているのかを考えながら、ブルーはトォニィの胸にそっと指先を伸ばした。淡く光るサイオンを見つめて怯えた風に体を震わせるトォニィに、ブルーは何もしないよ、と淡く笑う。
「痛いことも辛いことも、なにもしない。すこし触れるだけだから。トォニィ」
「なにかしたらグランパに言いつけてや、っ……ツェーレン、ひどい。なに」
「なに、じゃないわよ。ブルーにそういう口聞いてたわよって、ジョミーに言いつけてもいいのっ?」
いきなり後ろから平手で頭を叩かれて、トォニィはとても恨めしそうに振り返ったのだが。腰に手を当てて胸を張ったツェーレンは、己の正当性を確信しているのか一歩も引こうとしなかった。引きつった表情で嫌々と首をふるトォニィに、アルテラが呆れた様子で息を吐く。
「あのね、トォニィ。ジョミーはブルーが大好きなの、知ってるでしょう? だったら、分からない?」
「な、に、がっ」
一言ごとに区切って心底嫌がっている態度を見て、初めてブルーはその理由に思い到った。七人のナスカのこどもたち、全員がそうなのだが。ジョミーの祈りによって生まれてきた力強きミュウの第三世代は、現ソルジャーに無比の好意を抱いているのだった。中でも一番初めに、ジョミーが一番心を砕いていたカリナとユウイの子として生まれてきたトォニィは、好意の量がケタ外れに大きいのが見ていても分かる。
つまり嫉妬されているのだ。結局、出発前に泣きじゃくって仕方なかったジョミーを慰めたのも、その涙を止めたのもブルーだったし、しかもそれはナスカのこどもたちが見る前で行われたのだから。さてどうしたものだろうか、とブルーは柔らかな微笑みを浮かべたままで考える。ジョミーが泣いた理由はカリナとユウイを思い出してしまったからで、その痛みはトォニィたちに消せるものではないのだ。
しかしその説明をしても、トォニィたちは納得する所か父親と母親を思い出してちいさな胸を痛めるだけだろう。ナスカの子らの親は、悲しいことに一命の例外もなく、あの赤い星に眠っているのだから。無意識の仕草で目を伏せてしまったブルーの前で、トォニィを取り囲むナスカのこどもたちは呆れているようだった。中でもツェーレンは綺麗な形の眉をきゅっと吊り上げ、幼さに似合わない大人びた言葉を告げる。
「好きな人の好きな人にそんな態度だったら、ジョミーはきっと悲しむって、そういうことよ」
だから私は絶対にそんなことしない、と笑うツェーレンに、ブルーはおや、と顔をあげた。するとにっこりと好意的な笑みを向けられて、ブルーは思わず肩を震わせて笑い出す。早熟で賢いこどもだった。それでいてこども特有のまっすぐさと、大人のような冷静な観察眼と判断力を持っている。全体を見渡す判断力が一番強いのは、恐らくツェーレンだ。きみは頭が良いね、と笑うとツェーレンは恥じらいに頬を染める。
「まいったな。ここに居る皆、ジョミーのことが本当に好きなんだね」
「当たり前じゃないか! ぼくらはグランパの為に生まれてきたんだから!」
「そうだったね。嬉しいよ、どうもありがとう」
きみたちが今生きていてくれることが本当に嬉しいよ、と囁くように告げて、ブルーはトォニィの額にそっと口付けを送った。ささやかな触れあいに仰け反って驚くトォニィの背に手を回し、倒れないように支えながら、ブルーはもう片方の手を服の上から胸に押し付ける。とくん、と温かな鼓動が伝わってくる。それ自体にはなんの異変もなく、体の内側も外側も全くの健康体だった。サイオンの流れに、乱れもない。
では、と意識を細く集中させて、ブルーはトォニィの精神に触れてみた。するとすぐに力強いトォニィのサイオンを感じ、次に痛みの原因であろうものも見つけ出す。ふぅ、と集中を途切れさせるため息と共にトォニィから手を離すと、それまで静かに見守っていたタージオンが、ぐいとブルーの腕を引っ張った。優しく笑いながら目を向けると、返されたのは強い視線で。心配ないよ、と頭を撫でてやりながらブルーは笑う。
「分かったよ。怪我でもないし、風邪でもない。トォニィの錯覚でもない……今もまだ、ちくちく痛むだろう?」
「うん。痛い……悲しい。苦しい、感じ」
胸の前でぎゅっと手を握り締めるトォニィは、痛みと感情を感じても、その理由まで辿りつけないのだろう。トォニィはナスカのこどもたちの中で一番年長の外見をしているが、それでも十歳前後にしか見えないし、実年齢はその半分以下だ。大切な存在を看取る悲しみなど、まだ分からなくていい。それがそうだと、理解しないでいいのだ。困ったコだ、と甘やかす微笑を浮かべ、ブルーは己の胸に手を押し付けた。
とくん、と力強くも優しい鼓動が伝わってくる。それはブルーのものでありながら、同時にジョミーのものだった。そしてブルーの胸にも、ちくちくとした痛みがある。それはナスカのことがあってからずっとそうだったから、今更意識して『痛い』と思うものではなくなっていたのだけれど。トォニィ、と優しい響きで名を呼んで、ブルーはジョミーが愛したこどもを見つめた。
「それは、ジョミーの心だ」
「……え」
「ジョミーは船でお留守番だからね。一緒に来られないから、きみたちが心配でならないんだろう」
嘘をつくなら、それはなるべく真実に近く、そして優しいものが良い。すくなくとも、ジョミーがナスカのこどもたちを大いに心配しているのは本当のことだ。そうかな、と首を傾げてしまったトォニィに、ツェーレンからは冷たい視線が向けられる。え、なに、とたじたじになるトォニィに、ツェーレンはぼそりとずるい、と言った。
「ずるいわ、トォニィばっかり。分けて」
「な、なにを?」
「決まってるじゃない。ジョミーの心よ。感じているのでしょう?」
分けて、と手のひらを差し出してくるツェーレンに、トォニィは首を振りながら後ずさった。そしてさっとブルーのマントの陰に隠れ、無茶なこと言うなよっ、と叫んでいる。ツェーレンはぐっと言葉に詰まったものの、視線の強さは変えなかった。言葉がない分、訴える強さが増した錯覚さえある。うぅ、とうめきながらブルーのマントで体を隠し、トォニィはぎこちない足取りで歩き出した。
「い、行こうよ。買いもの。グランパが待ってる」
「その前に、やったらいけないことだけ確認しておこう。なにかあった時の為に」
大丈夫だと思うけどな、と呟きながら歩くタキオンは、兄らしくタージオンの手を引いてやっていた。足元見て歩きな、と注意が飛ぶのが微笑ましい。コブの手はツェーレンがしっかりと繋いでやっていて、ペスタチオとアルテラは並んで仲良く歩いている。気になって、思わず歩きながら視線を落とすと、ブルーのマントを頭からかぶって、まるでてるてるぼうすのようになりながらふてくされているトォニィと目が合った。
それがあまりに可愛かったものだから。慰めるとか、甘やかすとか、そういう気持ちではなくて。ひょいと手を伸ばしたブルーはトォニィを抱き上げ、軽く抱きしめて、なにごとも起きなかったように歩みを再開した。いいなぁ、といっせいに放たれた思念で空気が揺れる。状況を把握したトォニィが真っ赤になって暴れだそうとするのに、タオキンがため息をつきながら言葉を放った。
「約束、いち。ブルーに迷惑をかけないこと」
面白いほど唐突に、トォニィの動きが止まる。う、あ、と切れ切れの言葉が口からもれていくのをなんとなく無視しながら、ナスカのこともたちは歌うように告げていく。それは船から星に下りる直前、ジョミーが言い聞かせたことだった。良いコで行って帰ってくる為にも、これだけは約束していくんだよ、と。
「約束、に。ブルーの言うことは聞くこと。約束、さん。皆で行動して、一人にならないこと」
「約束、よん。知らない人に声をかけられたら、大きな声で仲間かブルーを呼ぶこと。約束、ご。身の危険を感じない限り、サイオンの使用は禁止。移動も歩いて。浮かない、飛ばない、転移しない。人の心を勝手に読まない」
「約束、ろく。約束を守ると、約束して行くこと、だったわよね。トォニィ?」
にこにこ笑うアルテラとペスタチオは、暴れたら迷惑よねぇ、と顔を見合わせてわざとらしく呟いている。タージオンはタオキンの言いつけを守って、時々下を見て歩きながら約束は守らなきゃ、とダメ押しをした。トォニィはなんだかもう泣きそうで、大きな目をいっぱいに開いて涙を溜めていた。ブルーはその表情を間近で見つめて、なにかを思い出そうと目を細める。そしてああそうだ、とブルーはトォニィを抱きしめた。
ぎゃーっ、と可愛くない叫びがほとばしるが、トォニィ以外の誰もが笑っていたので深刻さは欠片もない。なにっ、アンタなにっ、と涙目で抗議してくるトォニィに笑いながら、ブルーは優しい気持ちで告げる。
「きみは、ジョミーに似ているね。トォニィ」
優しい友人に囲まれて、そしてとても愛されている。よいしょ、とずり落ちそうになったトォニィの体を抱えなおして、ブルーはゆっくりと歩いていく。久しぶりに感じる大地は暖かくて、吹き抜けていく風は気持ちよかった。街路樹がまばらに植えられているまっすぐな道は、どこまでも続いているような気がして、だから急ぐ気にはなれない。行き交う人はブルーたちに一瞬目をとめて、柔らかに笑って過ぎ去っていく。
近所のこどもを連れてお出かけしているお兄さん、とでも思われているのだろう。引率がシロエだと逆に心配されますが、あなたなら落ち着いているので安心できます、と判断を下したリオは本当に正しかった。こどもたちはブルーとトォニィの様子にくすくすと笑いながら、時折不安を顔にちらつかせて辺りを見回したり、互いに繋ぎ合わせた手を握りなおしたりして、心の安定を保っていた。穏やかな時間だった。
やがて永遠に続きそうだった道が途切れ、視線の先には街が見えてくる。人の目を誤魔化すためにずいぶん郊外から歩いてきたから、ここからは人の数も視線も段違いに多くなるだろう。知らずに腰が引けてしまうこどもたちに微笑みかけて、ブルーはさて行こうか、とトォニィを地面に下ろした。そして迷うことない足取りで先に歩き出しながら、なにを買おうね、と声を弾ませる。
「お肉やお魚、小麦や卵や野菜は必須として……欲しいものをひとつだけ、考えておくといい」
大量に発注した食料は、こどもたちの親が長期で星を離れる為に船に積み込む荷物であり、家に蓄えておくものだ、と言い訳の準備は出来ている。もちろん、そんなに多くを運んでいけるわけがないので、そこは幻覚でもかけてごまかした上で、シャングリラの食堂に直に転移させる予定なのだが。恐る恐る付いてきて、ブルーを取り囲むように寄り添ってくるこどもたちは、思わぬ言葉に目を瞬かせた。
欲しいものと言われても、とその表情が語っている。ブルーは知らなかったのかい、と肩を震わせて笑いながら、一番近くにいたアルテラの頭を撫でてやった。
「おつかいに来たコはね、なんでもひとつ、好きなものを買ってもらえる権利を持ってるんだよ」
「なんでも?」
不思議そうに問いかけるコブに、ブルーはお店で売っているものならね、と付け加えた。七人中七人までが、ジョミーでもいいのかな、と思っていたからだ。現ミュウたちの長、ソルジャー・シンは『買ってもらえるもの』だと認識されていることを知ったら、どんな顔をするだろう。ちく、とまだすこし痛む胸に手を押し当てて、ブルーはくすくすと笑った。マントが後ろからひっぱられる。視線を向けると、トォニィが立っていた。
「ブルーは、なに買うの」
「そうだな」
トォニィがブルーの名前を、『ブルー』ときちんと呼んだのは覚えている限り始めてで、とても嬉しくてそれどころではなかったのだけれど。今その喜びを口に出せば、この先ずっと呼んでくれなくなる気がしたので。ブルーは視線をぐるりとめぐらせて、それからごく自然に言った。
「ジョミーにお土産。甘いものを」
「じゃあぼくもそうする! チョコとかキャンディーとかクッキーとか!」
「……ひとつまでだからね、トォニィ」
そんなにたくさん買い与えたら、ブルーは船に帰った瞬間、きっとジョミーに怒られるだろう。そぅっと注意したブルーにトォニィはちょっと怒ったような顔つきになって、そんなこと分かってるよ、と頷いた。そして買いものを終わらせて船に帰った一行が向かったのは、食堂ではなく、そわそわ落ち着きなく待っていてくれたジョミーの元で。ジョミーは七人分の『おつかいのごほうび』で『ジョミーにおみやげ』を受け取り。
さらにブルーから、トォニィが名前を呼んでくれたよ、という。甘い喜びに満ちた幸せを、受け取った。
一日にこなさなければいけない予定の、全てが終って。明日の打ち合わせも終わり、眠るまでの僅かな時間に。今日はおつかれさまでした、と労ってくるジョミーの笑顔に微笑を返して、ブルーはすっと手を伸ばした。二人ともベットに腰かけているから、すこし手をあげるだけで頬に触れられるのがどちらにも嬉しい。ゆっくりとした仕草で頬を撫でられて、ジョミーはくすぐったそうに笑った。ふ、と安らいだ息がもれる。
その吐息が空気に消えてしまう前に身を屈めて、ブルーはジョミーにキスをした。そっと掠めて触れるだけのキスを二回、三回繰り返して、うっとりと目を閉じたジョミーの耳元で告げる。
「トォニィに、きみの心が伝わっていたよ。帰ってくる頃には、もう消えていたようだけれど」
ちく、と。今も絶え間なくブルーの胸が痛むのは、その存在全てがジョミーのものだからだ。そしてジョミーもブルーのもので、二人が『二つに分けられた一つのもの』になっているからだった。痛みと苦しみを分け合って、悲しみを共有して。喜びを抱きしめて、楽しさに微笑みあうために。ずっと前にそうしてから、ブルーはジョミーの心をずっと感じているし、ジョミーもブルーの心を胸の中に抱いているのだった。
はっと目を見開いたジョミーと額をくっつけて、ブルーはくす、と暖かく笑う。
「ユウイとカリナの子で、一番初めのナスカのこどもだ。感じ取ってしまうことが多いのだろうね」
「……トォニィには」
「大丈夫だよ。言ってはいない。それに、もう伝わることもないだろう……ツェーレンは怒ると恐いようだから」
そこでなぜツェーレンの名前が出てくるのか分からず、ジョミーは眉を寄せて首を傾げた。そうしながらも、温かな雨のように顔中に降ってくるキスに、息が弾んで心が温かくなっていく。嬉しくて嬉しくて、上手く考えることが出来なかった。唇を重ねて、離して、大きく息を吸い込んで。ジョミーはブルーに甘えるように抱きついて、そういえば意外でしたと肩をふるわせる。
「あなた、意外とちいさいこどもの面倒見るのが上手で好きなんですね。今まで知らなかった」
「ジョミーを育てたかったんだ」
さらりと告げられた爆弾発言に、ジョミーは微妙な顔つきで黙り込んでしまった。言いたいことなど、通じ合っているのだから百も承知だろうに、ブルーはジョミーのまぶたや首筋にキスをしながらどうしたの、と笑う。首をくすぐる銀の髪を愛しげに撫でながら、ジョミーは仰向けにベットに倒れこみ、はぁ、と大きく息を吐く。
「あなたがぼくを育ててたら、今頃こんな風にはなってなかっただろうな、と思って」
「そうかな。それは残念だ」
にこにこ笑ってジョミーの服に手を伸ばし、ごく自然な動作で首元をくつろげさせながら。ブルーはジョミーを目を合わせて、この上なく幸せそうに笑った。
「ぼくはどんなジョミーだって、恋する自信があるのに」
「……うぅ」
じわりと涙を浮かべて、真っ赤な顔でジョミーはブルーを軽く睨みあげた。ことさら優しくジョミーを撫でながら、ブルーは泣いてしまえばいい、と思う。きっかけや理由は、どんなものでもかまわないから。ちくちくと胸を刺す痛みから、もうジョミーを解放してやりたかった。何回泣いても、別にかまわないのだ。繰り返すことで、涙は心を癒してくれる。それでも、大切な存在が失われた穴は、埋まってくれないけれど。
幸せな思い出を、幸せな気持ちで思いだせるようにするために。温かな過去を、今の悲しみで染めてしまわないように。よしよし、とジョミーをなでて、ブルーは涙にも口付けた。