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 私は諸国の機密を傍受しようとしました、と反省札をつけたエノーラが『学園』に現れたのは、事件終結から一週間が過ぎた真昼のことだった。状態は落ち着いたようでいて、依然として混乱に近い忙しさの中である。ナリアンは一度『学園』に戻ってきたものの、花舞に半ば拉致されるようにして連れ去られたままであるし、メーシャは一日の大半を、砂漠のラティの部屋で過ごしている。
 各国の王宮魔術師は、その半数が起き上がれるように回復したものの全快には遠く、もう半数はまだ意識を取り戻してはいなかった。それに対して、死にはしないよ、と保証したのは、ナリアンと同じく花舞に連れ去られているフィオーレである。花舞の女王の精神が安定するまで、という不安定な期間で貸し出されている白魔法使いは、起きないのは状態の良い悪いの差ではなくて、純粋な個人差であると告げた。
 だから、そう不安がることではないし、悲観するようなことでもない。落ち着いて待ってれば普通に起きてくるよ、と言うのが男の主張であり、大方の白魔術師たちがそれに同意した。フィオーレがいるのに花舞がナリアンを離さないでいるのは、女王の為ではなくロリエスが必要としているからである。ロリエスの精神安定の為に、ナリアンが必要だと判断されているのだった。
 それを聞いた寮長は俺も女神の教え子になりたかったナリアンだけずるいずるいやだやだやだ、と幼児退行を起こしかけ、偶然戻ってきていたナリアンにドン引きしながら殴られて、以後、寝台に沈んでいる。いよいよ無理が効かなくなっていたらしい。ナリアンは心底呆れた顔で、このひとを起き上がらせないでください俺の平和の為に、と副寮長に言い残し、舌打ちをしてからロゼアにも頼んで行った。
 起き上がっていたら通報して、いいよ分かった、というのが、ロゼアとナリアンが数日前に交わした会話の最後である。メーシャとは話せないままだった。行ってらっしゃい、行ってきます。おかえり、ただいま。か細い挨拶だけが、まだメーシャとロゼアたちを繋いでいる。ソキはラティに責任を感じていて、幾度か妖精にも起こしてあげるですぅと訴えていたが、自然回復以外の許可が下りることはなかった。
 砂漠は落ち着かないでいるらしい。筆頭は王の傍にいるものの、普段から中核を担っていた二人が不在であり、まだ目覚めない魔術師も多い中で事後対応に追われている。比較的平和なのは楽音と星降だが、どちらも目覚めない魔術師を持つという点に変わりはなく。そんな中でのエノーラである。白雪とて、平常を取り戻している訳ではないのだ。ただ、内情がよく分からないだけである。
 白雪の忙しさとしては、未知数。というかなにが起こってるのかよく分からない。連絡が取りにくい時とすぐ返ってくる時があって不安定、というのがここ数日の白雪の評判である。もしやまたなにか企んでいるのでは、とすら思われていた白雪の、その元凶とも言える魔術師の来訪に、『学園』の生徒たちは何が起きていたのかを瞬時に理解した。白雪の女王の折檻が長引いたのだろう。恐らくは、ただそれだけのことである。
 現れたエノーラは、もうすこし反省札の存在とその意味を考えようか、と言いたくなるほど機嫌よくつやっとした満面の笑顔である。体調も、とてもよさそうだった。エノーラは、談話室にさっと視線を走らせると、窓際の定位置から立ち上がろうとしていたロゼアの元へ、眩く明るい笑顔でかけよってくる。
「ロゼアくーん、ソキちゃーん! 待って逃げないでどこに行こうというの。逃さないわよ残念ね……!」
「あ、エノーラさんたらぁ、はんせーふだが三つもついてるぅ……!」
『なにしに来たのよ……。帰りなさいよ……』
 あっ歓迎されてないくじけそう、と嬉しそうにもじもじしながら言い放ち、エノーラは元気いっぱいに、嫌そうな顔をするロゼアに挨拶をした。
「おはようこんにちはロゼアくん! ご機嫌いかが? ソキちゃんと会話していい?」
「……本日はどのような御用でしょうか?」
「あっすごい他人行儀! よーし、お姉さん楽しくなってきちゃったぞー!」
 さりげなくもなく、エノーラの視線からソキを隠して抱き直しながら問いただすロゼアに、錬金術師は反省も後悔も落ち込みすらしていない、機嫌のいい楽しげな笑顔をきらめかせた。コイツどうすれば落ち着くのかしら、と真剣に悩みながら、妖精は腕組みをして息を吐く。
『なに? ソキに用事なの? それは陛下が許可したことなの?』
「許可? 頂いたに決まっているでしょう? ほらほら、見てこの反省札」
 それをつけて自由に反省してきなさいって仰ってたし、と告げるエノーラに、聞き耳を立てていた生徒たちは、一斉に女王の魂の安息を願った。エノーラの反省札は、三つ。私は諸国の機密を傍受しようとしました、私は錬金術師としての才能を悪用しました、私は女王の意思に逆らいました、とある。どれも、いつもより派手に発光していた。とても目立つ仕上がりになっている。
 そもそも、この反省札を作るのも錬金術師の役目の一つである。エノーラが自分で自分の使用分を楽しく作成してしまったのは、誰の想像に容易いことだった。自由に反省、というのは、もういいや、と諦めた女王に放流されたということである。反省札は、周囲の視線や評価などを気にして自己の反省を促す、という目的もあっての処置であるのだが。
 周囲がどう見ようと、注目されていることで楽しくなってきてしまう精神構造にもなれるエノーラには、期待できない効果だった。なんていうか、あの女王陛下も時々ほんとろくでもないけど、アンタという魔術師がいるというだけで帳消し所か相殺しきれていない感じがするからお労しさがすごいのよね、と呟く妖精に、談話室の一同は同意した。同意以外を顔に浮かべるものは一人もいないままだった。
 そしてやはり、錬金術師の反省は促されず。エノーラは、えっそうかなっ、と照れくさそうな笑顔で、気を取り直した様子でロゼアに向き合った。
「それで、ロゼアくん? ソキちゃんとお話させて欲しいんだけど、いいわよね? ありがとうー!」
 返事を最初から聞く気などなく、かつ諦めたりもしない態度に、くじけたのだろう。ロゼアはソファに座り直してソキを抱き寄せ、変な話なら帰りますから、とエノーラに釘を刺した。コイツの存在がそもそも変な方向に偏ってるから期待するだけ無駄じゃないの、と胡乱な顔をする妖精に、やだそんなに褒めないでよ、と強靭な精神を感じさせる照れくさそうな顔で言い放ち、エノーラはソキの前にひょい、と座り込んだ。
 他のひとは色々言うけれど、こうして自然に、いつも目を合わせてくれるので。ソキはじつは結構エノーラが好きである。問題ばかりなのはソキにも分かっているし、どうしよう、と思うことも多いのだが。なーんでーすかー、とご機嫌に問えば錬金術師はくすぐったそうに笑って、分かったらで良いのだけれど、と静かな声で囁いた。
「あなたから見て、件の事件の犯人は、もう目覚めることがないと思う? それというのもね、ラティの編んだ術式には予知魔術が混入していて……責めてるわけじゃないから、そんな顔をしないのよ。最後まで聞いてね」
「……はぁい。なんです、かー」
「うん。いいこ。……それで、つまりね、私たちでは現状、解析しきれないというのが正直な所なの。キムルがね……あの男がいつまでもぐだぐだ眠っていなければもうすこしなんとかなるんだけど……まあ、それはいいのよ。ともかく、ちょっと助けてくれないかなって話。ソキちゃん、魔術解析得意なんだって?」
 リトリアから話を聞いて、エノーラはウィッシュに確かめてから『学園』に来たのだ。ソキに、専門の教育は、されていない。それは大体適性を考慮して行われるものだし、なにより、一年分の授業もまともに受けられていないソキには早すぎるものだ。なんでそんなことできるのか分からない、というのが、教員としてのウィッシュの意見。でも、できるならやってもらうといいよ、ソキすごーい、というのが、『花婿』としてのぽやぽやほんわかしきった作業許可だった。
 ロゼアがしぶい顔をしているのは、それがソキの負担になるのか、ならないのか分からないからだろう。ソキはきょときょととロゼアとエノーラ、妖精を見比べたあと、ふぅん、とあまり興味のなさそうな声を出して、ちょんっと首を傾げてみせた。
「ロゼアちゃんが、やぁんなんでしたらぁ、ソキはしなーいーですー」
『ちょっと、またそんなこと言って……!』
「そんなことないもん。ロゼアちゃんは元気がないの。ややんな気持ちは、もっと元気がなくなっちゃうの。だから、そうなら、今はソキ、しない」
 ぴとんっ、とくっついて抱きつきなおすソキから視線を動かして、エノーラはロゼアを見た。こどもっぽい振る舞いだと分かってはいるのだろう。ロゼアは気まずそうに視線を反らしてソキを抱きなおし、負荷はかかりませんか、と錬金術師に問いかけた。全くない訳じゃないわ、とエノーラは正直に答える。
 ただ、得意な人はすらすらやってすぐ終わるし、不得意な人は本当に大変でいつまでやっても終わらないようなことで、ソキちゃんは前者だって聞いてるし、当事者だから。どうかな、と思って、と引き下がらず待つ微笑のエノーラに、ロゼアはそうですか、と息を吐く。ううん、とソキは眉を寄せた。ロゼアちゃん、と囁きながら、ソキは指先でちょいちょい、と『傍付き』の眉間をくすぐった。
「あのね、ソキ、ほんとのほんとに、きっとね、得意なの。ちょいちょいの、ふにゃあんの、きゃあんにゃーっ! っと出来ちゃうの。だからね、大丈夫なんですよ」
『ソキ。時間とか労力で説明なさい。なにが、なんで、どうなんですって?』
「うー、うー……? ……あ、あのね。ロゼアちゃん、あのね。ソキね、刺繍とお絵描きくらい、得意なの。だからね、大丈夫なの」
 例えが、ソキの好きな楽しいことであったからだろう。ロゼアは目にみえてほっとした様子で、それならソキの好きにしていいよ、と囁き落とす。気乗りはしない様子だが、それでも確かに許可である。それじゃあやるですっ、とソキは気合の入った返事をした。本当は現場に行って状態を目視するのが一番なのだけれど、と前置きした上で、エノーラは一冊のスケッチブックをソキに差し出した。
 分からない所は空白にしてあるから、魔術式と魔法円、魔法陣の欠損を埋めてほしいと依頼されて、ソキはこっくりと頷いた。魔術式とは、答えを導く数学の公式や、途中式。あるいは、料理の作り方、として授業では説明されるものだった。魔法円が材料と分量、魔法陣が料理名と完成図。それぞれが必要であり、それぞれが、互いに補い合うことで完全な資料となるものである。
 ソキは説明されずとも、それを正式な形で書き表すことができた。連れ去られる前に寮長に提出したものがそれである。まるで、何度も、何度も繰り返し、修練を積んだ魔術師のように。ソキは、なぜか、それができるのである。急がないけど、数日中にはよろしくね、と囁やかれて、ソキは任せてくださいです、と力強く頷いた。そうしながらも、あれ、と首を傾げたのは、己の内でなにか引っかかるものがあったからである。
 ぱちくり目を瞬かせて、ソキは己の胸に両手を押しあてた。その、奥底に眠る器は砕けたままであるのに。どうしてか。その形を、描けるような。描いたことがある、ような。手と、目が、その形を知っていて、思い出そうとしているような。不思議な、感じたことのない。なにかが芽吹くような、それは、予感だった。失われたものが。失われたままでいるものが、それでも、確かに。
 形ないものが、影の形だけを思い出すような。予感。



 寝台に目を向けると、胸に勿忘草の本をぎゅむっとばかり抱きしめたソキが、ロゼアにぐりぐり頭を擦りつけながらうぅうーんっ、と唸っている。唐突に飛び込んできたその光景をほのぼのと見守りかけ、メーシャは浮かんだ笑顔をそのままに、部屋の扉に数歩後退した。部屋の位置と札を確かめる。メーシャの部屋である。ロゼアの部屋ではない。ええと、と戸惑いながら、もう一度室内を確認する。
 ううぅんにゃーですううう、と唸りながら、『傍付き』の膝に陣取ったソキが、うりうりぐりりとロゼアの腹に顔を擦りつけている。困ったなー、と甘く解けた囁きで、ロゼアはソキの頭を、背を、ゆっくりと撫でて愛でていた。別に不思議な光景ではない。ここがメーシャの部屋でさえなければ。それとも、もしや、メーシャの部屋はロゼアの部屋になったのだろうか。不在の間に部屋替えが行われた可能性を頭にいれながら、メーシャは戸口からそっとロゼアを呼んだ。
「ロゼア……? ソキ、ここ、俺の部屋でいいんだよね……?」
「おかえり、メーシャ。そうだよ」
「あっ、メーシャくんです! おかえりなさーいですー! あのね、あのね、ちがうの。鍵があいてたの。それでね、寮長ったら、合鍵をくれなかったです!」
 いけないことですぅ、とふんがいするソキの補足を、呆れ顔で舞い降りた妖精が囁き告げる。部屋の鍵があいていたのは本当のこと。それならば、寮長に頼んで合鍵ででも閉めてもらおうと頼んだのだが、忙しくて管理簿をつけるのがめんどくさいと断られたので、ソキがお留守を任されてあげるぅっ、という結論に至った、とのことだ。
 曰く、鍵のかからないお部屋ならソキが自由に使っていい、ということでは、とのことだ。ソキの独自解釈の成された『お屋敷』規定は、ロゼアが嗜めても妖精が叱っても、だってそうだもん、と覆ることはなく。一応、そこがメーシャの部屋であるというのは理解していることを確かめて、ロゼアと妖精は、ソキがいたずらをしないように監視をこめて、一緒にいるのだということだった。
 そうだったんですね、と苦笑するメーシャに、顔を上げたソキがぷぅっと頬をふくらませる。
「ソキ、いたずら、しなーいー。しなーいですぅー。ソキはぁ、メーシャくんにおかえりなさいを言うかかりしようと思って待ってたんだもん。メーシャくん、おかえりなさい」
「ただいま、ソキ。ロゼアも……リボンさんも、ありがとう」
「うふん。あのね、それでね、さしつかえなければ、なんですけどね。ソキはいくつか教えて欲しいことがあるです。おつかれなんでしたら、明日でも大丈夫なんてすけどぉ、そしたら、明日また行かれる前に教えて欲しいです」
 いいよ、と言いながら、メーシャは部屋の扉を閉めた。そこを閉じても、部屋に人の気配と声がすることが、知らず冷えていた心をゆるく温めていく。ほっと肩の力を抜いて。なに、と笑いながら歩み寄ってきたメーシャに、ソキはお尻の下からもぞもぞごそそとスケッチブックを取り出し、えっとお、と言いながら紙面を開いた。
「あのね、ラティさんのこと、なんですけどね。桃色なの? それとも、れもん色なの? ソキはね、桃色かなって思うんですけど、れもん色か、それとも、薄荷色かも知れないです? って思ってね、ちょっと進まなかったです」
「うー……ん……。ごめんね、ソキ。なんのこと?」
「おねむりのラティさんのね、ねむねむのね、気持ちの色なの」
 うーん、そっかぁ、とメーシャは微笑んで頷いた。説明をしてもらうと、余計に分からなくなる。ロゼアに目を向けると、申し訳なさそうに苦笑され、メーシャの印象を聞いてるんだよな、と言葉が付け加えられた。あ、と思ってメーシャは笑みを深くする。ロゼアも、すこし、調子が戻ってきたようだった。そうなんです、そうなんですぅ、と頷いて、ソキがあのね、と口を開く。
 聞きたいのは、眠るラティを見た時の印象、それを色で表すとするのなら、何色になるか、ということであるらしい。そんなこと考えたこともなかったな、と首をひねるメーシャに、ソキは諦めず、お願いおねがいですうぅ、とちたぱたした。どうしても知りたい、というか、必要なことでるらしい。
「例えばね、ソキはアスルをぎっとして眠るとひよこ色のねむねむになるですしぃ、リボンちゃんが一緒だと、きらきらの林檎色の気持ちですし、ロゼアちゃんのぎゅうだとぉ、ふにゃふにゃきゃあんの蜂蜜色なんですよ! わかる?」
「分かるような、分からないような……。そうだなぁ……」
 眠る、ラティのことを考える。顔色は良い。呼吸もしっかりしていて、病の匂いはしなかった。部屋は明るくて静かで、清潔で、寂しい。ふっと目を覚まして、すぐにでもメーシャ、と呼んでくれそうなのに、ラティはずっと眠り続けている。そこに色を見出すとすれば、桃色でも、れもん色でも、ないような気がした。ひんやりとして、どこか、かなしい。薄荷かな、とメーシャは言った。
 ソキの提示したものからではそれが一番近く、口に出してみると、殊の外しっくりと合うようだった。薄荷だ、うん、薄荷だよ、と呟くメーシャに、ソキはふむむっと頷き、紙面の端に急いでそれを書き入れていく。ところでそれ、なに、と問うメーシャに、ソキはよくぞ聞いてくれましたっ、という自慢げな顔をして、頼まれごとなんですよぉ、と言った。
 妖精が諦めた顔で首を振る。ラティの使った魔術の詳細を調べて、描いてるのよ、と告げられて、メーシャはなるほどと頷いた。
「さっきは、それで悩んでたの?」
「さっきぃ……?」
 悩んでたっけ、という顔でソキがくてりと首を傾げる。ぱちくり、まばたきをして。ソキは唐突に、あーっ、と声をあげて、手をぱっちーんと打ち合わせた。勢いが良すぎて痛かったらしく、即座に悲しげな顔でずびっと鼻をすするのを眺め、メーシャはしみじみと微笑んだ。ソキを見ていると、癒やし効果がものすごくて心が和んでいく。
 メーシャにもロゼアにも微笑んで見守られながら、ソキはあわあわちたたと慌ててなぜか左右を見回し、いやぁああんっ、とぐずった声をあげた。再び、ロゼアにぐりぐりうりりと頭をなすりつけ始めたのを見つめ、メーシャはほわりと息を吐く。
「ソキ、そんなにしたら、ロゼアのおなか擦り切れちゃうよ。どうしたの?」
「擦り切れないよ。悩み事なんだよな、ソキ。分からなくて困ってるんだよな」
「ううぅううにゃああぁあぁあ……! そうなんですううぅうう……!」
 擦り切れちゃう、という箇所だけ聞こえないようにさっとソキの耳を手で塞いだロゼアに、メーシャは安堵さえ覚えて頷いた。ずっと調子が悪かったと感じていたので。元気になってなによりである。アンタそこで判断するのやめなさいよ、と妖精から白んだ目を向けられて、でもそう思うでしょう、とメーシャは微笑んだ。
 妖精は嫌そうな顔をして、ついと天井近くに浮かび上がる。砂漠から戻ってからこちら、妖精はずっとソキの傍にいる。これからはずっと、そうなのだという。ルノンも都度、顔を出してくれるし、ここ数日は朝に夕に様子を見に来てくれるので、寂しい、とは思わないのだが。ずっと一緒、というのは、やはり嬉しいことだった。
 よかったな、と幸せな気持ちを感じながら、メーシャは視線をふたりに戻してくすくすと笑った。
「どんな悩みごと? 俺にも助けられることかな」
「ありがとうです……。でもね、でもね、ソキのね、ソキの、思い出せない悩みごとなの……」
 それは、思い出せないでいる、ということを、思い出した悩みなのだという。うん、と不思議な気持ちで問い返すメーシャに、ソキはつまり、なにかを思い出せる筈なのだ、と言った。けれども、それが、なにか、というのがまず分からないし。なんでそういう風に思うのかも分からないし。でもあとちょっとのような気がするし。でも、でも、分からなくて、困っているのだという。
 うーん、とメーシャはさらに苦笑した。分からないまでも、それは落ち着かないだろうな、と思う。助けになってあげたいのだが、それはソキ以外にはどうすることもできないことだ。なにか手がかりはないの、と訊ねるメーシャに、ソキはがっかりしきった口調で、ないの、としょんぼり呟いた。言葉には、どうしてもうまく表せないのだろう。もどかしそうに、ソキは幾度も瞬きをした。
 考えても、考えても、そこに辿りつけないのだろう。ソキはつつんとくちびるをとがらせて拗ねたあと、ぐずっ、と鼻をすすってロゼアにくっつきなおした。うやぁああぁあいやぁああんっ、と落ち着かないでいる声がほわんふわんと響いていく。ほわ、と満たされた幸せそうな笑顔で、ロゼアがぽんぽん、とソキの背を撫でていく。
「ソキ、ソキ。あんまり悩みすぎてもよくないだろ。なにか飲みに行こうか」
「うー、うぅー……。メーシャくんも、いっしょ?」
「一緒だよ。な、メーシャ」
 有無を言わさぬロゼアの笑顔に、メーシャは思わず声をあげて笑ってしまった。友人の調子が戻ってきたのは、ほんとうに幸せなことだ。ソキを抱いたまま立ち上がるロゼアに促され、メーシャは不思議な気持ちで廊下に出る。待ち構えていたように、あっ、と声がかかった。
「メーシャくん! 戻ってきたって聞いて……あの、クッキー焼くから、お茶しない? ソキちゃんとロゼアも誘ってさ」
「もちろん! ……だよね? ロゼア、ソキ」
「ナリアンくんのクッキー! ソキの! そ、そきのっ! なりあんくんのくっき、くっきー!」
 ちたぱたたたたたっ、とはしゃぐきらんきらんのソキを、ロゼアが危なげなく抱き直しながら宥めていく。あれ、と不思議な顔をして、ナリアンはひょいと扉を確認した。メーシャの部屋である。メーシャの部屋から、ロゼアとソキも出てきただけであるのだが。あれ、ロゼアなにしてたの、と問うナリアンの気持ちは、メーシャにはよく理解できた。
 御留守番、としれっと言い放つロゼアの腕の中で、そうなんですううぅう、とソキがふんぞりかえる。そっかあ、と事実関係の確認とか必要ないよねソキちゃんがそう言っているならそれが全てそれが正義つまり俺の妹は今日も最高に可愛い世界平和を感じる、と心から思っている笑顔で頷いて。ナリアンは、とりあえず調理室かな、と言って歩き出した。
「今日は、なにしてきたんだ? ナリアン」
「俺? 俺は、今日は……なにかをしてきたよ、ロゼア……。ただひとつ分かってるのは忙しかったってことかな……。立ち止まるな死ぬぞって思った……どうして俺は戦場にいるんだろう……世界は平和になったのでは……平和とは……? ってなってた。俺はなにをしてきたんだっけ……?」
「うん、うん、ナリアン。ナリアン、休もう」
 俺もクッキー作ってみたいな、今日は俺ので我慢してよ、と笑うメーシャに、教えるよ、とロゼアが同意する。ロゼアちゃんのくっきーっ、と廊下の端までふんわか響いていく大きな声で叫び、ソキは途端にそわそわと、腕の中から降りたそうにした。クッキー作りの邪魔になる気がしたからである。ロゼアのクッキーの為には、ちゃんと抱っこをがまんできるソキなのである。
 ふすふす、気合の入った鼻息で、いいこに待てる宣言をするソキに、ロゼアはやんわりと笑みを深めてみせた。抱きなおして、ぽん、ぽん、と背を撫でる。
「メーシャと一緒に作るから大丈夫だよ。ソキは作るのを見る係な。できる?」
「きゃあーん! ソキ、おてつだいするぅー! ソキ、けんめいに、みるかかりをするですううぅう!」
「ロゼア……。じゃあ、俺はソキちゃんを眺めててもいい……?」
 ひたすらソキを眺めて癒やしを得たいナリアンの気持ちは、メーシャにはよく理解できた。ロゼアはちょっとどうするか考えたあと、まあ、ナリアンなら、と言って許可を下す。ナリアンくんもソキと一緒に見る係をするです、とまたひとのはなしを半分くらいしか聞いていなかったが故の納得に、ソキはこくりと頷いた。ちたちたん、と足を揺らして、ソキはぴとんとロゼアにくっついた。
「クッキーたのしみですぅ! ね、ナリアンくん」
「そうだね。ソキちゃんかわいいね、ロゼア」
『アンタたち、せめて話しかける相手くらいは一致させなさいよ……』
 よくよく考えると、会話が成立しているのかも怪しいものがあるのだが。ナリアンもソキも、特に気にしてはいなかった。くすくす、笑って、メーシャは足取りも軽く廊下を歩いていく。『学園』に帰ってきた時の重苦しい気持ちは、思い出すことも。胸をよぎることもなく。あたたかく騒がしい休憩の隙間に、落ちて、溶けて、消えてしまった。



 エノーラからの依頼の品が完成したのは、スケッチブックを受け取った翌々日のことだった。ソキはロゼアの勧めで念の為、半日ほど時間を置いてからじっくりと間違いがないかを確認し、どこも訂正することがないのを確かめてから、寮長を通じて白雪に連絡した。すぐにやってきたエノーラは、自信満々の顔をするソキから半信半疑にスケッチブックを受け取り、ぺらぺらとめくって、沈黙する。
 物見遊山から瞬時に錬金術師たちのまとめ役の顔になり、エノーラは視線と意識を幾度も、描かれたそれらに集中して向けて。やがて、関心と恐れが等分になった息を吐き、ありがとう、確かに、と言ってスケッチブックを受け取った。
「……急がなくてもいい、と言ったのに。頑張ってくれちゃった?」
「ソキ、ちゃぁんと休憩しながら、けんめいに頑張ったんですよぉ? あのね、ロゼアちゃんとね、メーシャくんがね、ソキの好き好きないちごと、くらんべりーと、らずべりの、クッキーを焼いてくれたです! それでね、メーシャくんはね、ねむねむなラティさんのことをね、たくさんお話してくれたです。それでね、ナリアンくんは、花舞が戦場だからね、ロリ先生にもクッキーを持っていくです」
 それでね、それでね、とあれこれ話すソキの言葉の時系列はばらばらのぐちゃぐちゃで、しかも内容も統一されていない。大人しく微笑んで聞きながら、そっかぁ、と頷き、エノーラは額に指先を押し当てて、必要な情報だけを整理して考えた。つまり、特別急いだ訳ではなくて、ちゃんと休憩だってした上で頑張ったので、褒めて、という要求らしい。この纏めで間違ってはいないだろう、とエノーラは思った。
 なにせ、なにか言いたげな微笑みで、ロゼアがエノーラを見つめてくるので。恐らくはソキの褒め待ちである。あのね、あのね、それでね、と楽しくおしゃべりを続けるソキの言葉が、僅かばかり途切れた隙を逃さず。エノーラはソキの目の高さにしゃがみこんだまま、偉いね、と間違わず、その言葉を選んで差し出してやった。
「頑張ってくれたのね、どうもありがとう。とっても偉かったわね。……うーん、卒業後に白雪とか、どう? ちょっと帰ったら陛下に相談したいわこれ本当に……。え、ねえ、本当に無理しなかったの? 体調悪くとか、なっていない? 本当に?」
「ソキぃ、ずっとロゼアちゃんのお膝と、ロゼアちゃんのだっこだったんでぇ」
 いいでしょおぉ、とばかりふんぞり返って自慢するソキに、エノーラはそっかぁ、とまがおで頷いた。ロゼアを確認しても、本当に体調を崩すようなことはなかったらしい。取り急ぎ帰らなければいけないことを悔やむ顔で立ち上がり、エノーラは今度またその件でおはなしさせてね、とソキに向かって囁いた。
「あと、あの、あまり頻繁にはしないと誓うから、時々こういうことを依頼してもいいかしら……? あ、もちろん、お金は払うから! いっぱい! かわいこちゃんに報酬を弾むの大好き! どうかなっ?」
「……ましゅまろーと、飴も、つけてくれるです? この間頂いたのがね、とってもとっても美味しかったんですよ」
「もちろん……! 陛下に、どの洋菓子店のをソキちゃんに口止め料で渡したのか、ちゃんと聞いておくからね……!」
 やったぁああ錬金術師の発展に栄光あれーっ、と叫んで談話室を飛び出していくエノーラを見送り、ソキは定期的なましゅまろ取得の目途に、鼻息荒く頬を赤らめて喜んだ。これはロゼアちゃんに、ないしょにしないといけないですっ、とふんふん算段をつけるソキを白んだ目で見下ろし、妖精は、今誰を座椅子代わりにしているのか思い出しなさいよ、と言いかけてやめにしてやった。
 成り行きを見守っていた寮長が息を吐きながら歩み寄り、お前できるのは隠しておけよって言ったろ、とソキに小言を言い始める。顔を逸らしてつつん、とくちびるを尖らせるソキは、反抗的な態度でしらないです、と耳を手で塞いだ。
「今日もおねつさんなのに起きているです。いけないひとのお話は、ソキ、聞かないです。しーらーなーい!」
「薬は飲んだから熱は出てないって言ってんだろうが……」
「薬を飲まないと熱を下げられない状態で、出歩かないでください、寮長。五国への連絡をするのに、必要でしたから頼みましたが……ナリアンからも頼まれているので、見逃してあげられません」
 眠りましょうか、と微笑むロゼアに、ソキがぷぷっと頬をふくらませて寮長を睨んだ。ロゼアちゃんにお眠りをお願いされているのに、ねむらないでいるだなんて、という『花嫁』の非難いっぱいの視線に、寮長はうんざりとして天を仰ぐ。
「分かったよ、休む休む。もういくつか終わったら……おいロゼア。その、アスルを振りかぶってるソキを止めろ」
「え? どうしてですか?」
「うふふふん! ソキ、かいりょーに、よねんがないんでぇ! えいえい!」
 ぽーん、と思いの外まっすぐに、アスルはよく飛んだ。咄嗟に逃げようとした寮長を妖精がさっと拘束したおかげで、まったりとした速度で飛んで来たアスルは、無事にぽよんとぶつかって落ちる。即座に意識が落ちて倒れ込む寮長の体を、副寮長がため息をつきながら抱き留めた。強く止めることができず、傍で見守っていた副寮長は、意識のない男をてきぱきと担架で運ばせた。
 念の為に保健室で白魔術師に見て頂くように、と指示を出し、副寮長は視線で、このたびはなにを、とソキに問いかけた。ソキはアスルあするっ、とロゼアの腕の中からちたちたと拾って欲しいと要求しつつ、自慢げな顔でおねむりさんなの、と言った。
「元気になるまで、おねむりさんになるようにしたの」
「……回復されるまで、昏睡する、ということでよろしいでしょうか?」
「お腹がすいたら起きられるです。それでね、お腹がいっぱいになるとね、寝るの」
 眠りっぱなし、という訳でもないらしい。実に精緻に調整された呪いである。関心と恐ろしさが混ざり合った複雑な視線で、副寮長は、あまり呪いをぽんぽん使わないように、とソキに注意した。そもそも原則として、学園の生徒は不意の魔術発動を禁じられているのだ。完全に使用禁止でないのは、生活に便利に使うのも精度向上に有効だからであり、日々の訓練にもなるからである。
 ソキは、あまり真剣に聞いていない声ではぁーい、と返事をして、あきらめ気味の副寮長からアスルを手渡してもらった。言っておくように、とロゼアに重ねて注意が向けられる。すがる視線が妖精に向けられるのは、ロゼアがソキを甘やかすのが分かり切っているからで、説得しきれるかも不安がられているからだろう。まあ任せておきなさいな、と腕組みをして、しかし妖精は首を傾げてみせた。
『まあ、ソキの場合は、正当防衛と強硬手段として、まだ判断がついていると思うわ。今の所はいいんじゃない?』
「……それでも、規律は守るべきものです。よろしくお願いしますね……?」
『分かっているわ』
 本当かな、と疑いのまなざしを向けられて、妖精は心外である、と眉を歪めて羽根を揺らめかせた。ソキのやることなすこと呪いに傾いているのは、本人の資質と性格から来るものである。妖精が普段から、ロゼアのことを呪うだのなんだの口にしているからでは、ないのである。断固として。関連性など、ない。ソキが真似っこ大好きで、すぐきゃっきゃはしゃいでやりたがるにしても。違うのである。
 たまには祝福でなにかしなさい、アタシに妙な疑惑がかけられているから、というと、ソキはぱちくり瞬きをした。
「ぎわくって、なぁに?」
『まさか疑惑の説明から……? 嘘でしょ……? まさかでしょう……?』
「ぷぷ! リボンちゃんたらぁ、ソキをばかにしてるぅ! 意味を聞いたんじゃないもん! 誰にぃ、なにを疑われてるの? って、ソキ、聞いたです!」
 リボンちゃんをいじめるひとは、ソキがアスルでもふりとするですっ、と気合の入った宣言に、妖精は諦めの濃い気持ちでやめなさいね、と言い聞かせた。もふり、という気の抜けた擬音に反して、その効果は猛々しく獰猛だ。寮長が声も上げず眠りに落ちた所を見ても、一件からさらに即時性が強化されたと見て間違いはないだろう。空腹になったら目が覚める、という仕様も、中々できることではない。
 空腹になったら呪いとして終了し、解呪される、というものではない。そこからさらに、空腹が満たされたら、心身が回復したとみなされるまで呪いは継続されるのだ。その連続性ひとつだけ見ても、妖精にすら複雑だ、と感じさせるものである。なんでそういうトコだけ成長が早いのかしらとため息をつく妖精に、ソキはちっとも反省のない態度で、ソキったら努力家なんでぇ、と胸を張った。
「色々魔術を使うのをね、じーっと見てね、覚えてね、それで、組み合わせてね、改良したの。えへん!」
『はいはいすごいすごい偉い偉い。いいこだから、それをアタシとロゼア以外の前で口にするんじゃないわよ? 淑女でお姉さんのソキならできるわよね? もちろん、できるわよね?』
「もちろんですうううう! ソキ、淑女でぇ、おねえさん、なんでぇ!」
 このちょろくてどうしようもない所も改善させなければと思うのだが。こういう時にすこぶる便利なのはどうしたものか、と妖精はため息をついた。ロゼアは、妖精がわざわざ言わなくても、その危険性を分かっているらしい。ソキ、ほんとうに内緒だからな、約束しような、と真剣な声で囁かれるのに、『花嫁』は無垢な瞳で『傍付き』を見た。じっと。言葉はなく。その意思、その気持ち、心の裏側までを見通すような眼差しで。
 やがて、こくり、と素直な態度で『花嫁』は頷いた。
「分かったです。ソキ、言わない。……ロゼアちゃん、いけないことです? ソキ、いけないことをしてしまたです……?」
「いけなくはないよ。いけなくなんて、ないよ。ソキが、とっても頑張り屋さんで、いいこだよ。いいこだな、ソキ。……かわいいかわいいソキ。おいで」
 しょんぼりとしたソキを抱き寄せるロゼアは、それでいて上手い言葉を見つけられないでいるようだった。溜息をついて、妖精は談話室を慎重に見回した。幸い、寮長が倒れた時から周囲の注意はそちらに向いていて、ソキの言動に注意を払っている者はないようだった。副寮長だけがその危険性を見抜いていたが、あれは口がかたい男である。相談すべきことと、秘することの大切さを知る魔術師でもある。
 だからこそ。それこそ、ソキの才能が起因となる取り返しのつかない事故が起こらない限りは、その胸ひとつに秘めてくれるだろう。今の所、ソキの特異な才能は、表立った問題としては浮上してきていない。悪用されない限りは問題にならない方向性の才能でもある。それが不幸中の幸いだった。また魔術師として成長していけば変化が現れるかも知れないが、ソキにはまだ先のことだった。
 なにせ、一年時の授業さえ、終了していないのである。五国も『学園』もやや落ち着きを取り戻しているとはいえ、授業は無期延期となっている。再開の目途が立ち次第、知らせが張り出されることになっているが、数日でどうなることでもない。半年以内にはなんとかなるよ、というのが、在学期間の長い生徒たちの意見だった。それくらいあれば、王宮魔術師たちも調整が終わって、また『学園』に顔を出すようになるのだという。
 妖精は羽根を揺らめかせながら、しょんぼりしている、と見せかけてすでに気を持ち直し、ロゼアにくっついて甘えているソキを見下ろした。所で、と気になっていることを口にする。
『悩みは解決したの? ソキ。今日はふにゃうにゃしてないみたいだけど』
「……なや……そ、そそそそ、ソキ、淑女なんでぇ! いつ、いつも、悩みに、うにゃにゃんとしているわけじゃ、ないんですよぉ? わか、わかったぁ? ほんと、ほんとなの! 忘れちゃうんじゃないの! ちがうんですぅ!」
 はいはいそうね、淑女淑女、と雑に流して、妖精はため息をついた。忘れられるような悩みであるから、別に深刻という訳でもないのだろう。ううぅ思い出したら気になってきてしまたですうううソキはなにが思い出せないんですううぅ、とロゼアにぐりぐり頭を擦り付けだすソキにため息をついて、妖精は『学園』を散歩でもしようかしら、と高く舞い上がった。
 決して、なんで思い出させるんですか、というロゼアの視線から逃れたかった訳ではない。決して。違うのである。うっとおしいのは確かなことであるのだが。違うのである。今後ロゼアとはどう付き合っていくべきなのか考えながら、妖精は落ち着き始めた『学園』を、悠々と飛んだ。

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