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 1・5 限りある存在が落とした、あの日の

「……彼女は、最後に……なんて、言ってた」
「なんも」
「っ! そんな訳ないだろうっ! 教えてくれ!」
「や、だからなにも言い残さなかったっつってんだろーが。聞き分けろボケ」
「イギリス! ……アーサー、お願いだ。教えてくれ」
「……」
「……お願い、だから」
「……」
「……アーサー」
「なにも」
「……」
「聖女はなにも言い残さず、処刑台に消えた。火に、苦痛の声もなにもあげず」
「……っ」
「ただ、最後まで」
「……」
「最後まで、神の名を呼んでいた」
「……」
「……それだけだ」
「……」
「……」
「……」
「『フランシス』」
「……ん?」
「……」
「……」
「……なんでもない」
「アーサー?」
「……」
「……」
「なんでも、ないんだ」

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