「アーサー! お客様にスコーンは食べさせなかったでしょうねっ!」
「出してねぇよ騒ぐなよ……ほら、ちゃんと椅子座れ」
「ふふーん。ピーター君は良い子ですからちゃぁんと椅子に座ってティータイムなのですよー。褒めれば良いのです」
「あー育て方間違えた」
「聞こえないのですよー」
「テメェ……。……まあいい。で?」
「で?」
「俺は、来客との会話を盗み聞きするような教育をしたか? ピーター・カークランド」
「……き」
「き?」
「きが、ついてた、ですか」
「気が付かない訳ねぇだろばーか。気配を隠そうとするなら、もっと呼吸に気を配れ」
「……うー」
「……なにか言うことは」
「……ごめんなさい、ですよー」
「よし」
「……」
「……」
「……」
「……なんだよ」
「……」
「……ピーター、なんだ?」
「……あの」
「ん?」
「……あのひと、誰ですか」
「……客」
「ちげぇですよ! そんなことは知ってるのですよ!」
「いいじゃねぇか。細かいこと気にしてると育たないぞ?」
「なんでですかー! ちーっとも細かくないですよー!」
「あーもー……。そのうちお前にも分かるって」
「なにがですかー」
「今、お前が俺に聞きたいこと」
「……?」
「……そのうち分かるから」
「……アーサー」
「だから」
「アーサー」
「……聞かないで、くれ」
「アーサー!」
「……」
「……泣か」
「……」
「なか、ない、で……っ」
「……」
「泣かないで、泣かないで、泣かないでっ……! 泣かないでください、アーサー!」
「……っ」
「なんですか? ピーター、そんなに悪いコト聞いたですか?」
「ち……が」
「聞かないですっ! もう聞かないから、だからっ!」
「……」
「……だから」
「……うん」
「泣かないで、くださいですよ……!」
「……」
「……大丈夫ですよ」
「……」
「ピーターは、ずっと」
「……」
「ずぅっと、ずーっと、アーサーの傍に居ますからね」
「……ピー、ター」
「海上要塞ですから! 僕がアーサーを守ってあげるのですよ!」
「……」
「……ね!」
「……ピーター」
「はい?」
「ありがと、な」
「……うん。どういたしまして、なのですよ」