BACK / INDEX / NEXT

 4・5 返還都市の思う、そこはかとない呟き

「sorry.シェリ、すまないがこの書類が終わるまでは相手してやれな……っ?」
「え、カオル? どうしました」
「ど、どうし……っ! な、なんで背中にくっついてくるん、だ」
「そこに背中があったからに決まってるじゃないですかー。カオルって床に座って仕事するから、いつも背中がガラ空きでくっつきやすくて良いっすね。あったかい」
「……」
「……んー」
「……」
「……んー?」
「……」
「……カオル? なんで円周率数えてるんですか?」
「……ちょっと、精神統一的な」
「そんなに難しい仕事ですか……?」
「だ、大丈夫……っ!」
「うい。頑張ってくださいねー」
「……ああ」
「……」
「……」
「……うーん」
「……っ!」
「……あー」
「っ、……!」
「……えー」
「シェリ!」
「うい?」
「背中を、指で、なぞったりするのは、止め……っ!」
「やー、だってずるいじゃないですかー。この肩幅とかー、わきの下まで筋肉ついてるし、お腹もちょっと硬くてもっちりってどういうことっすかー」
「ちょ、誰か助けて……!」
「えー、そんなに難しいなら私もお手伝いしますよ?」
「シェリ! 誰かに性教育してもらって来るっす! お願いだから!」
「フランシスさんにもアーサーにも、こいつらマジ変態だなーと思うくらいにみっちりされましたけど」
「そうだ……! されない筈がないですよね俺も知ってる!」
「カオル?」
「マジぱねえから……っ! シェリ、離れて……!」
「やー」
「離れろっ!」
「……」
「あ……」
「……」
「……や、その……お……お願いだから、シェリ。すこしで、いいっす、から」
「……嫌」
「……シェリ」
「嫌です」
「……嫌な想い、させたくない、から」
「……」
「シェリ」
「……どうして、嫌だって、そう思うの」
「……シェリ?」
「……」
「……」
「……教えて」
「え」
「……よく、分からないです。そんなの。でもカオルは知ってるって、そう思うから」
「シェリ?」
「教えてください、カオル」
「な、に」
「……私の」
「……っ」
「……私の、瞳、は」
「……シェ、リ」
「……恋を」
「……っ!」
「……」
「……」
「教えてください」
「シェリ」
「私の瞳は、恋してますか……?」

BACK / INDEX / NEXT