「……アンタって馬鹿よね」
「うるせぇしみじみ言うな……!」
「今になってそんなに恥ずかしいくらいなら、言わなきゃよかったのに」
「だ、だってよ」
「それとも、なぁに? 私に抱きついて離れない理由でも欲しかった?」
「それはない」
「そこは嘘でも頷けよ」
「エリザが怖いぜ……! こ、ことりちゃん助けっ……!」
「残念ね。ことりちゃんはお昼寝中でした」
「……っ!」
「……」
「……」
「……悪友って」
「あ?」
「悪友。言ってたじゃない、悪友じゃなくて親友になりたい、って」
「エリザお前どっから聞いてた」
「どこからにして欲しい?」
「全部聞かなかったことにして欲しいぜ?」
「そう。だが断る」
「このドエス……っ!」
「よしよし、ギルは可愛いわねー」
「兄上、ルート。はやく帰って来てくれ……!」
「あと三時間は無理じゃないかしら。遠くのスーパーに買い物に行ったようだから」
「どんだけ遠いんだよ!」
「仕方ないじゃないの。運転手がローデリヒさんなんだから」
「わざとローデリヒに運転手頼んだだろ」
「だってローデリヒさん、たまにはドライブしてみたいですねって言ってたんだもの。ベルンちゃんとルートが一緒なら安心じゃない。どんなに時間がかかっても、いつかは家に帰って来てくれるわ」
「……確実に国境を二つは超えるドライブになりそうだぜ」
「さっきスイスについたってメールが来てたけど」
「目的地はスーパーだろ? 徒歩でも二十分のスーパーだろ?」
「夕食には間に合わないかも知れないわね……」
「いやもうどう考えても無理だろ……」
「それで親友のことだけど」
「話が元に戻りやがった……!」
「……ねえギル」
「な、なん、だよ」
「親友、なりたいの?」
「は?」
「フランシスとアントーニョの親友に、なりたいの?」
「……なりたくなかったら言わねぇもん」
「……」
「……エリザ?」
「……んでよ」
「え」
「なんでよ。いいじゃない、悪友で」
「……エリザ」
「なによ」
「なんでそこに嫉妬すんのか意味分からねぇんだけど」
「だってアンタの親友って私だけだったじゃない。ずーっと昔の話だけど」
「あれは親友ってか戦友じゃねぇ?」
「あー、まあそうかも。占有」
「エリザ」
「なによ」
「今なんか意味違った気がすんだけど」
「気のせいよ」
「……とにかく! そこ、お前の嫉妬するとこじゃねぇから!」
「……」
「……」
「……」
「……悪友は親友になれるかも知れねぇけど」
「……」
「親友は、恋人になれないだろ?」
「……」
「……」
「……ギル」
「おう」
「許してあげる」
「おう」